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Evidence-Based Article

カッピング療法と

スポーツパフォーマンス

< Key Points >

  • カッピング療法は古くから東洋で用いられている代替療法の一つですが、近年そのパフォーマンス向上効果から、アスリートからの人気が高まっています。
  • カッピング療法は、疲労した筋肉の血行を促進し炎症を抑えることで、トレーニングや試合後の筋肉のリカバリーを急速に早めてくれます。
  • この治療法は薬の投与などもなく比較的リスクが低いので、痛みのコントロールやアスリートのパフォーマンス向上に最適です。

カッピング療法って知っていますか?これは昔ながらの治療法で、日本では一般的に吸い玉(すいだま)またはカッピングと呼ばれています。具体的には、皮膚にカップを当てて真空にし、その部分をうっ血状態にすることで、血行促進や老廃物の排出を促します。この療法は、これまで痛みや呼吸器系の問題など、様々な病状に対して使用されてきましたが、最近ではスポーツのパフォーマンスを高める手段としても用いられるようになってきています。また、疼痛の緩和手段の一つとしても、注目されるようになってきています(Aboushanab, 2018)。

カッピング

カッピング療法の歴史

カッピングは長い歴史を持つ治療法で、古代中国の書物には、既にカッピングを意味する言葉が記載されていたそうです。また、ギリシャやエジプトでも動物の角などを用いて施術が行われていたという説があります。日本には6世紀ごろ伝わったとされており、江戸、明治時代には盛んにおこなわれていました。中国医学では今でも一つの治療法として現在に受け継がれています。

カッピング療法は、血行を促進して老廃物を排出することで、身体のエネルギーの流れを良くし、バランスを整えるとされています (Dalton, 2017; Mehta, 2015)。 最近の研究では、片頭痛、繊維筋痛症、さらにはストレスにも役立つ可能性があることが示唆されています(Cao et al., 2010; Kim et al., 2011)。

現代のカッピング療法とアスリート

近年アスリートの間で、筋肉痛からより早く回復するためにカッピングがよく使用されています(Armstrong et al., 2017)。 オリンピックの水泳競技を見ると、選手の背中に丸いあざのようなマークがよくみられますが、それがカッピングのあとです。いくつかの研究が、このカッピングの有用性を証明しています。Hong (2011) は、カッピングは身体の組織を整え、神経、筋肉を伸ばし、血行を良くするうえに、古い血球の分解を助ける事さえあると述べています。そしてCui (2012) の研究はこれを裏付けており、カッピングは血管を拡張させ、毛細血管の血行を促し、身体の治癒力を助けると述べています。

更に他のいくつかの研究にて、カッピングによる痛みの緩和や可動域の改善が報告されており、この療法は身体にあまり負担をかけずに、筋肉や関節の痛みを緩和するのに有効だと報告されています(Bridgett, 2017)。

 

以下、アスリートがカッピングを使用する際に考えられる利点を挙げてみます。

 

  • リカバリータイムの短縮:アスリートがカッピングを利用する大きな理由の一つに、運動後のリカバリータイムの短縮の可能性が挙げられます。カッピングで疲労した筋肉への血流を促すことで、炎症や筋肉のこわばりを軽減し、早い段階でトレーニングを再開できると示唆されています。
  • 痛みの管理:連日のトレーニングやケガなど、アスリートは痛みと常に向き合っています。この療法は、薬物を使用せず、また体に過度の負担をかけずに痛みのマネージメントをすることが出来る上、理学療法やハリ治療など、他の治療法と組み合わせて使用できるという利点があります。
  • パフォーマンスの向上:一部のアスリートからは、カッピングが彼らのパフォーマンスに大きく貢献したという報告があります。カッピングで可動域が改善し、筋肉の緊張が軽減した、と彼らが感じた結果、パフォーマンスが向上した可能性があります。
  • 最小のリスク:ルーティンのトレーニング計画を補佐する形でカッピングを取り入れた時、副作用の可能性が小さく、効果的かつ実用的な代替療法であると言えます。
  • カスタマイズが容易:アスリート個人の問題や目標に合わせてカップの吸引力や持続時間、配置場所などを自由にカスタマイズすることが可能です。
水泳

アスリートとカッピング療法の未来

カッピングは古代から現代まで、さまざまな文化で行われてきた興味深い治療法です。この療法は、筋肉痛や疲労からの早期回復を願うアスリート達にとって、有効な手段のようですが、その科学的評価を行うには、さらに優れた研究が必要です(Akkurt, 2020; Bridgette, 2017; Musumeci, 2016; Trofa, 2020)。いくつかの研究は有望に見えますが、カッピングがアスリートにどのように機能して、どう彼らのパフォーマンスを向上させる助けになっているのか、まだ完全にはわかっていないのです。

あなたがカッピング療法を試される際には、資格をもった、信頼のおけるプロと相談されることをお勧めします。カッピング療法が、本当にアスリートにとってゲームチェンジャーとなりうるのか、それを見極めるためにも、今後の更なる研究に期待です。

< Reference >

  • Aboushanab TS, AlSanad S. Cupping Therapy: An Overview from a Modern Medicine Perspective. Journal of Acupuncture and Meridian Studies. 2018;11(3):83-87. doi:1016/j.jams.2018.02.001
  • Athletic Training Department, School of Allied Health, Lincoln Memorial University, Harrogate, TN 37752, USA, Dalton EL, Velasquez BJ, Athletic Training Department, School of Allied Health, Lincoln Memorial University, Harrogate, TN 37752, USA. Cupping Therapy: An Alternative Method of Treating Pain. Public Health Open J. 2017;2(2):59-63. doi:17140/PHOJ-2-122
  • Mehta P, Dhapte V. Cupping therapy: A prudent remedy for a plethora of medical ailments. Journal of Traditional and Complementary Medicine. 2015;5(3):127-134. doi:1016/j.jtcme.2014.11.036
  • Qureshi N, Alkhamees O, Alsanad S. Cupping Therapy (Al-Hijamah) Points: A Powerful Standardization Tool for Cupping Procedures? JOCAMR. 2018;4(3):1-13. doi:9734/JOCAMR/2017/39269
  • Hong SH, Wu F, Lu X, Cai Q, Guo Y. [Study on the mechanisms of cupping therapy]. Zhongguo Zhen Jiu. 2011;31(10):932-934.
  • Cui S, Cui J. [Progress of researches on the mechanism of cupping therapy]. Zhen Ci Yan Jiu. 2012;37(6):506-510.
  • Department of Sports Medicine, School of Medicine, Erciyes University, Kayseri Turkey, Akkurt S, High Altitude and Sports Sciences Research and Implementation Center, Erciyes University, Kayseri, Turkey. Scientific Overview of Cupping Applications in Athletes. TurkJSportsMed. Published online October 22, 2020. doi:5152/tjsm.2020.194
  • Bridgett R, Klose P, Duffield R, Mydock S, Lauche R. Effects of Cupping Therapy in Amateur and Professional Athletes: Systematic Review of Randomized Controlled Trials. The Journal of Alternative and Complementary Medicine. 2018;24(3):208-219. doi:1089/acm.2017.0191
  • Trofa DP, Obana KK, Herndon CL, et al. The Evidence for Common Nonsurgical Modalities in Sports Medicine, Part 2: Cupping and Blood Flow Restriction. JAAOS Glob Res Rev. 2020;4(1):e19.00105. doi:5435/JAAOSGlobal-D-19-00105
  • Musumeci G. Could Cupping Therapy Be Used to Improve Sports Performance? JFMK. 2016;1(4):373-377. doi:3390/jfmk1040373