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Evidence-Based Article

プロテインと

そのリスク

< Key Points >

  • アメリカFDAは規制に関与はしていない。
  • 比較的安全とされているが、リスクがないわけではない。

  • 理論上、肝臓への負担が増加する。

除脂肪体重の増加や、筋肉質のボディを謳う積極的なマスマーケティング戦略により、プロテインパウダーの使用は根強い人気を保っています。その効果の理論的根拠として、プロテインの摂取は、高アミノ酸血症を導くことから骨格筋合成の増加を促し、筋タンパクの分解を抑えるため 筋タンパクが増大することが挙げられます。ダイエタリーサプリメント(栄養補助食品)の一つであるプロテインパウダーは、医薬品ではなく栄養補助食品に分類されるため、どのような形態であれ、販売に際してアメリカ合衆国FDA(アメリカ食品医薬品局)の認可を必要としません。市場に出る前にその安全性と効果について厳しくテストされる医薬品に対して、サプリメント類はその健康被害が証明されるまで安全とみなされ、規制されることなく市場に出回ります。

プロテインパウダーの種類

プロテインパウダーは成分上、大きく分けて4種類に分類されます。濃縮プロテイン分離プロテイン完全プロテイン不完全プロテインです。濃縮プロテインは大部分がプロテインで、それ以外に少量の脂肪と炭水化物が含まれます。分離プロテインは殆どの成分がプロテインで、それ以外の栄養素はほぼ取り除かれています。完全プロテインには必須アミノ酸である9種類のアミノ酸(ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリン)がすべて含まれており、不完全プロテインは9種の必須アミノ酸の内の数種類しか含まれていません。現在市場で最も人気のあるプロテインサプリメントは、ホエイとカゼインのプロテインです。ホエイは価格が手ごろで、人体に吸収されやすい特徴があり、運動後のリカバリーに最適なので最も人気があります。ベジタリアン、乳製品が嫌い、又は摂らない方にはピー(主にエンドウ豆由来)、大豆、ヘンプ、コメ等から抽出されたプロテインのオプションがあります。ここでは市場の殆どを占めるホエイとカゼインのプロテインサプリメントに焦点を置いて解説していきます。

    プロテインパウダー
    プロテイン
    FDA
    子供のウエイトトレーニング

    FDAの健康補助食品の規制について

    FDA(アメリカ食品医薬品局)とFTC(連邦取引委員会)は栄養補助サプリメントや、食品の販売、マーケティングの規則を作る役割をしています。FDAは正確なラベル表示を指導し、サプリメントや食品のラベルに、病期の診断、予防や治療、回復などについて虚偽の主張がなされていないか確認します。FDAの基準として、製造者は製品について「よい」、「健康的」、「高タンパク、ミネラル、ビタミン、繊維質」など食品成分に関係する主張をFDAのレビュー無しで記載できます。

    FTCFDAは、似通った権限を持ちますが、FDAは一般に健康にかかわる製品全体を管轄します。FDAは、もし製品に欺瞞的な面があると判断した場合、製造者に警告通知を出す権限があります。具体的に言うと、もしも改訂がなされなかった場合には罰則措置が行われると通知します。FDAはその後、対象の製品を市場から締め出す手続きを始めることが出来ますが、医薬品のそれと比較して、FDAの健康補助食品に対する規制はかなり緩やかなものです。その規制事項は、危険な可能性のある物質を、消費者が食品や健康補助食品から摂取する可能性から守るものではありません。

    ここで大切なのは、健康リスクの責任は、製造者にあるということです。健康リスクはその商品が市場に出回り、消費者が指摘した場合にのみ注目され、対処されます。プロテインパウダーの場合、可能性のあるリスクとして、毒性物質の体内蓄積(例として、重金属類、人工甘味料や調味料などの混ぜ物)による急性、または慢性の毒性、さらにそこから慢性疾患へと発展する可能性が挙げられます。

    安全性と提案

    プロテインの過剰摂取に対する主な懸念は、たんぱく質過剰により腎臓の糸球体内圧が慢性的に上昇し、過剰濾過が起こるため、腎臓に過度の負担が掛かる事です。これまでのところ、定期的なプロテインパウダーの過剰摂取が腎臓障害を発生させるという重要な証拠は見つかっていません。よって、レベル表示され、一般的に販売されているプロテインパウダーはおおむね安全とされています。現時点でプロテインパウダーの使用は安全とされていますが、腎臓障害を起こす可能性が強まるリスクファクターのある人は、プロテインをサプリメントとして使用する際にはかかりつけの医療従事者としっかりと話し合うことが大切です。リスクファクターとして、65歳以上の年齢、高血圧、心臓病、抹消動脈疾患、そして腎臓病が挙げられます。子供と若年層の主なリスクファクターには、低糸球体内圧(GFR)、蛋白尿、高血圧、貧血があります。子供と若年層のその他のリスクファクターとして低出生体重児、未熟児、尿酸、鉛または重金属、高脂血症、代謝性アシドーシス、酸化ストレス、骨とミネラルの代謝障害等があります 。これまでのところ、プロテインパウダーの摂取と重金属摂取、毒性、健康障害の関連を裏付ける証明はありません。

    プロテインパウダーを使用する上での適用量、年齢、リスクグループについては、さらなる調査、研究が必要で、コンセンサスでは一般的に安全とされていますが、慎重に医師と個々のケースについて話し合うことがとても重要です。

    サプリメントを摂り始める前に、自身の健康状態を知ることの重要性を公衆に広く教育していくことはとても重要です。個人が前述したリスクグループに属する場合は特に、プロテインのサプリメンテーションを始める前に、かかりつけの医師と相談して、腎機能のチェックをすることが望まれます。プロテインサプリメントを始めることを考えているすべての人は、医師に腎臓機能の評価を相談することが大切です。

    < Recommendation by Our Experts>

    • プロテイン選び:プロテインは数多くマーケットに出回っていますが、しっかりとした組織の認定、そして栄養ラベルが細かく記載されているものを選びましょう。そして、ホエイ、カゼイン、または植物由来、自分の身体やニーズに合ったものを選びましょう。
    • プロテイン摂取の管理。プロテインの過剰摂取は肝臓やその他の臓器に負担をかけるかもしれません。何事も摂りすぎは良くありません。しっかり一日のタンパク質摂取量を管理しながらプロテインを摂取しましょう。

    < Reference >

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