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キネシオテープは効果があるの?

その科学的根拠とは?

キネシオテープは1970年代に日系アメリカ人のカイロプラクターで鍼灸師の加瀬健三博士によって発明されました。従来のテーピングと異なり、このテープは伸縮性に富み、元の長さの140%にまで伸ばすことが出来るため、関節や筋肉の動きを制限せず自然な動きをサポートします。また、通気性、防水性がある綿の伸縮ファイバーは蒸れにくく、スポーツ中に使用可能なため、現在では様々な種類の筋骨格系障害に使用される世界的に有名なツールの一つとなっています。

2008年の北京オリンピックや、2012年のロンドンオリンピックで多くのアスリートが使用したことで、スポーツ界のみならず一般にもケガの治療、予防とパフォーマンス向上のために広く使用されるようになりました。今回は、このキネシオテープと従来のアスレチックテープとの違い、キネシオテープの利点、欠点、そして効果的な使用方法について見ていきましょう。

キネシオテープはアスレチックテープとは違うのか?

キネシオテープ、アスレチックテープはどちらもスポーツ時のケガの予防や治療に使用されますが、関節の安定性やそのパフォーマンスはそれぞれ異なります。また、その優れた弾力性を活かすため、キネシオテープのテーピングは、従来のアスレチックテープとは違った手法で行います。更に、キネシオテープは防水性、通気性があるため、数日間装着したままにすることも可能です。

キネシオテープ

2023年のAbdelmonem et al. の研究は、キネシオテープは慢性の肘の外側上顆炎や、足首の捻挫などにおいて、アスレチックテープよりも効果的で、痛みの軽減に役立ち、等速性強度の改善に有効であると述べています。等速性強度とは、筋肉が一定の速度で収縮する際に発揮される力の事で、専用の機器を使用して測定、訓練されるため、リハビリテーションやトレーニングの際に役立つ指標となります。 

2020年にJavad Sarvestan and Zdeněk Svoboda が行った研究では、敏捷性テスト時に足首にキネシオテープを使用した際、従来のアスレチックテープを使用した場合と比較して、足首の可動域が大幅に改善したと述べており、キネシオテープはアスレチックテープよりも、パフォーマンスの向上により適したオプションであると述べています。

また、テニスプレーヤーにおいては、キネシオテープはアスレチックテープよりも肩の筋肉の強化に役立つと述べられています。つまり様々な研究結果にて、このキネシオテープはアスレチックテープと比較して、関節の安定性と、運動能力の改善により有益であることが示唆されています。

キネシオテープのメリット

2021年のTren et al. らの研究は、キネシオテープは首、腰、膝、上肢、肩、下肢など、身体のどの部分に使用した際でも、痛みの軽減や障害の改善に役立ったと発表しています。また理学療法や運動療法を行う際にキネシオテープを併用することで、身体の治癒プロセスをサポートし、回復が促進されます。

興味深い研究として、Bravi et al. が2017年に行ったもので、キネシオテープの使用は固有受容フィードバックが増強されるため、非利き肢により大きな効果を与える可能性があるという結果が出ています。固有受容フィードバックとは、身体の立ち位置や動き、力加減などを感知する「固有受容感覚」に基づくフィードバックのことで、筋肉や腱、関節にある受容器によって感知され、脳に情報が送られることで無意識のうちに身体の動きや姿勢を調整する役割を果たします。

更に、キネシオテープは神経への刺激による感覚フィードバックの向上、筋肉のサポート、血流とリンパ流の改善、痛みの軽減、そして心理的安心感などにより、末梢神経障害を持つ人の運動能力を向上させる効果的なツールとして活用できます。

まとめると、キネシオテープは関節、筋肉、筋膜の機能を改善する役割を果たします。そして可動域と筋力を改善し、筋の筋膜束を抑制し、うっ血やリンパの腫れを減らし、痛みの軽減に役立ちます。その結果、協調性と運動性の改善、固有受容感覚の刺激が起こるため、運動能力やバランスを向上させる効果があります。

かゆみ

キネシオテープのデメリット

キネシオテープはパフォーマンスに対して多くの利点をもたらしてくれそうですが、もちろん完璧ではなく、その持続時間にも様々な意見があります。いくつかの研究では効果が約2週間持続したと述べており、中には3ヶ月の有効性があったことを示す研究もあります。しかし、キネシオテープの長期的な有効性のエビデンスはまだ限られています。

2022年のSong & Yangが行った調査では、キネシオテープは治療の際の有用な補助療法として使用できる可能性があるものの、キネシオテープを単独の治療法として使用するべきではないと結論しています。また、皮膚の炎症やアレルギー反応が見られた症例もあります。なお、傷の上にキネシオテープを直接貼付するべきではありません。

キネシオテープのはどう効果があるのか?

  • キネシオテープを貼ることで、皮膚と筋肉の間にスペースが出来ます。これにより、リンパ液や血液の流れが改善し、腫れやむくみ、痛みの軽減に役立ちます。
  • テープが筋膜や皮膚にある神経受容体を刺激し、痛みや緊張を和らげる神経メカニズムを活性化することで脳に痛みの信号が伝わりにくくなります。
  • キネシオテープが筋肉、関節をサポートするため、安定性が高まり、可動域が改善します。以上のすべての効果により、キネシオテープは筋肉の過剰な収縮や緊張を防ぎ、筋肉の機能をサポートします。

 

キネシオテープの使用法

  • キネシオテープを貼付する部位は清潔で、乾燥していることが大切です。毛深い場合は剃毛をしておくとよいでしょう。
  • 筋肉のサポートを目的とする際は、筋の起始部から停止部へ向かって、筋肉が伸びた状態で貼付します。関節を安定化させたい際は、関節の動きをサポートするように関節をまたいで、軽く曲げた状態で貼付します。
  • アスリートにおいてキネシオテープの使用は、特に遅発性筋肉痛(DOMS)に効果的で、痛みの軽減や回復の促進に有効な保護的手段と考えられています。

キネシオテープは関節や筋肉、筋膜の動きをサポートすることで関節可動域と筋力を向上させ、筋肉や筋膜の過剰な緊張を抑えます。また、血流やリンパの流れを促進することでむくみや腫れを軽減し、痛みを和らげます。更に、身体の協調性やバランスを改善し、運動機能を向上させる可能性のある補助的療法です。長期的な効果については更に質の高い研究が必要ですが、アスリートのみならず、一般人にとっても、リハビリ時や肩こり、腰痛、膝の痛みなどに効果的に使用できる便利なツールであると言えます。ただし、キネシオテープの効果を最大限に引き出すには正しい貼り方が不可欠です。理学療法士など専門家に相談してあなたに最適な方法を学んでください。

< Recommendation by Our Experts>

  • 正しい貼り方を学びましょう
    キネシオテープの効果を最大限に引き出すには、正しい貼付方法が重要です。あなたの身体に合った方法を、理学療法士やトレーナーに相談して学びましょう。

  • 単独の治療法としてではなく、補助的に使用しましょう
    キネシオテープは痛みの軽減や筋肉・関節のサポートに効果がありますが、あくまでリハビリやパフォーマンス改善の一部として使うのが効果的です。

  • 肌トラブルに注意しましょう
    テープを貼る前は皮膚を清潔かつ乾燥させましょう。かゆみや赤みなどのアレルギー反応が出た場合はすぐに使用を中止し、医療専門家に相談してください。

< Reference >

  • Abdelmonem AF, Ameer MA, Ghuiba K, Al Abbad AM. Kinesio Taping Versus Athletic Taping in Managing Chronic Golfer’s Elbow in Male Athletes. International Journal of Athletic Therapy and Training. 2023;28(3):156-162. doi:1123/ijatt.2021-0130
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