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交代浴とアスリート
科学的根拠に基づくリカバリー
毎日のトレーニングで身体を限界まで追い込むアスリートにとって、リカバリーはトレーニングと同じくらい大切です。最近、プロ・アマ問わず人気を博しているリカバリー法の一つに温冷交代浴があります。これはとてもシンプルかつ実行しやすい療法で、全身、又は身体の一部を温水と冷水の交互に浸すことを繰り返すものです。しかし、この療法は科学的に効果が証明されたリカバリー法なのでしょうか、詳しく見ていきましょう。
温冷交代浴とは?
温冷交代浴は身体の一部又は全身を、温水に3-4分浸し、その後すぐ冷水に1分間浸すサイクルを3-5回繰り返します。
・温水:38-43℃ (100-110℉)
・冷水:13-18℃ (55-65℉)
炎症を抑えるために冷浴で締めくくるプロトコルや、リラクゼーションを促進するために温浴で締めくくるプロトコルなどがあります。筋肉の疲労回復や関節痛の緩和など、目的によって温水、冷水のどちらで仕上げるのかを決めるとよいでしょう。
温冷交代浴が機能するメカニズムは?
温冷交代浴は身体の一部または全身を温水、冷水に交互に浸すことで血管の収縮と拡張を促します。その収縮と拡張のポンプ効果によって血行の循環を促進し、炎症の軽減や老廃物の排出を促すため、激しい運動後のリカバリーに役立つとされ、いくつかの研究にてその有効性が裏づけられています
疲労回復:
研究によると、温冷交代浴により、トレーニング後のアスリートの主観的な疲労感の軽減や、リカバリーが早まったと感じていることが示されています。(Shimizu et al., 2024; Crowther et al., 2017)
血流改善と酸素供給の向上
温冷交代浴は筋肉内の血流と酸素供給を改善し、身体の自然治癒力を高める可能性があります。 (Shadgan et al., 2018)
乳酸のクリアランス
いくつかのエビデンスはアクティブリカバリー(激しい運動後の疲労回復のために、低強度の軽い身体活動をおこなうこと)に加えて温冷交代浴をリカバリーのルーティンに組み入れると、より効果的に乳酸などの疲労物質排出が行われることを示唆しています。 (Pelana et al.,2019)
アスリートのフィードバック
多くのエリートアスリートは温冷交代浴によるプラスの効果を報告しており、この療法を取り入れる事で、疲労からのより早い回復を実感していると述べています。 (Silva et al., 2022)
臨床における利点
理学療法と温冷交代浴を組み合わせることで痛みが軽減し、可動域が改善するため、変形性膝関節症などの状態をより良くマネジメントできる可能性があります。 (Fokmare & Phansopkar, 2022)
温冷交代浴のリスク
どの療法にも当てはまることですが、温冷交代浴も全ての人に適しているわけではありません。ケンブリッジ大学病院によると、以下のような状態の人はこの療法を避けるべきです。
・開放創や感染症のある方
・Kワイヤー(骨折や骨の固定時に外科手術で使われる金属製のピン)が患部から露出している方(感染症のリスク)
・高血圧など心血管系疾患のある方
・感覚障害のある方 (やけどや冷傷のリスク)
温水、冷水の温度に注意を払い、熱傷を防ぐために時間のガイドラインを守りましょう。
温冷交代浴はアスリートのリカバリー法の一つとして採用する価値があるものですが、全てに効く特効薬ではありません。特に激しいトレーニングや試合後に戦略的に使用することは有効ですが、この療法のみに頼らず、その他のリカバリー法を併用することが大切です。
効果的なリカバリーの基礎は良質の睡眠と栄養、そして休息です。温冷交代浴はこの基礎の上に立ってリカバリーを促進させる補完的なツールと考えるのがいいです。基礎となる睡眠、栄養、休息を整えると、この療法はより大きな効果を発揮するでしょう。
< Recommendation by Our Experts>
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リカバリーの基礎を固めましょう:温冷交代浴を始める前に、良質な睡眠、バランスの取れた栄養、適切な休息を確保することを心がけましょう。これがすべてのリカバリーの土台となります。
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温冷交代浴を戦略的に活用:激しいトレーニングや試合後に温冷交代浴を取り入れ、疲労の軽減やリカバリーの促進を図りましょう。ただし、それだけに頼らず、他のリカバリー法と併用することが大切です。
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自分に合った方法を見つける:全てのリカバリー法が全員に適しているわけではありません。体調や健康状態を考慮し、自分に合った温冷交代浴のプロトコルを見つけましょう。必要な場合は専門家に相談してください。
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< Reference >
- Shimizu R, Hangai M, Takahashi S, Hikawa K, Nakajima K. 535 EP020 – Survey of the methods and subjective effects of contrast bathing during the olympic games. In: E-Posters. BMJ Publishing Group Ltd and British Association of Sport and Exercise Medicine; 2024:A84.1-A84. doi:1136/bjsports-2024-IOC.145
- Crowther F, Sealey R, Crowe M, Edwards A, Halson S. Influence of recovery strategies upon performance and perceptions following fatiguing exercise: a randomized controlled trial. BMC Sports Sci Med Rehabil. 2017;9(1):25. doi:1186/s13102-017-0087-8
- Shadgan B, Pakravan AH, Hoens A, Reid WD. Contrast Baths, Intramuscular Hemodynamics, and Oxygenation as Monitored by Near-Infrared Spectroscopy. Journal of Athletic Training. 2018;53(8):782-787. doi:4085/1062-6050-127-17
- Pelana R, Maulana A, Winata B, et al. Effect of contrast water therapy on blood lactate concentration after high-intensity interval training in elite futsal players. Physiother Quart. 2019;27(3):12-19. doi:5114/pq.2019.86463
- Silva PVTD, Pedrini Junior H, Oliveira PEMD, Agostinho JLP, Castoldi RC, Zanuto EAC. Effectiveness of the contrast technique as recovery after effort according to professional athletes. Fisioter mov. 2022;35:e35112. doi:1590/fm.2022.35112
- Fokmare PS, Phansopkar P. A Review on Osteoarthritis Knee Management via Contrast Bath Therapy and Physical Therapy. Cureus. Published online July 27, 2022. doi:7759/cureus.27381