Physio Academia:
Evidence-Based Article
インターミッテントファスティングと
アスリート
健康や美容のために、食事を見直そうと決心してネットを検索すると、果てしない量のダイエット情報が出てきます。情報過多の今、ダイエット一つを取っても、種類や方法が多すぎて、どれを選べばよいのか混乱する方も多いでしょう。アスリートのように、何をいつ食べるかが競技のパフォーマンスに影響を与える場合は特にそうです。
ここ数年よく耳にするようになったダイエットの一つに、「インターミッテントファスティング」があります。これは、基本的には”時間制限型”のダイエット法です。ここ10年ほどの間で、この食事法に興味を持つアスリートが増えてきています。アスリートの最大の目標は、競技時にいかに最高のパフォーマンスを発揮するかにあります。食事は最高のパフォーマンスを発揮する上での重要な鍵のひとつとなりますが、インターミッテントファスティングはアスリートのパフォーマンスにどのような影響があるでしょうか?
ここでは、科学的にインターミッテントファスティングとアスリートのパフォーマンスの関連についてみていきます。
インターミッテントファスティングとは?
前述したように、インターミッテントファスティングは、”時間制限型”の食事法です。このような食事法は、何世紀にもわたり、しばしば宗教的習慣として行われてきました。
イスラム教のラマダンはその一例です。この場合は30日間、日の出から日没までの間、水を含む一切の飲食が禁止されています。
ダイエットとしてのインターミッテントファスティングにはいくつかの形態がありますが、最も基本的なのは「16:8アプローチ」です。一日の間に食事を摂っても良い時間を8時間に制限し、残りの16時間は断食をします。なお、イスラム教徒のラマダンとは異なり、カロリーを含まない水分はこの16時間内でも摂っても良いのが普通です。他にも週に2日、連続しない日に極度に摂取カロリーを抑える「5:2アプローチ」、週に1日か2日、連続しない日に丸々24時間断食をする「イート・ストップ・メソッド」、そして「OMAD」オマドという一日一食のみのアプローチなど、様々な方法があります。
インターミッテントファスティングの効果としては、体重減少、血圧の低下、Ⅱ型糖尿病などの代謝性疾患のリスク低下などが挙げられます。この食事法の効果の根本的メカニズムの一つは、一日の中で何も食べない時間を延長することにより、遊離脂肪酸(FFA)が動員されて脂肪の酸化が促進し、ケトン体の生成が増加することです。
インターミッテントファスティングの効果として、ダイエット効果がよく挙げられます。しかし、従来の減量ガイドラインである、持続的エネルギー制限(CER)とエクササイズ等を組み合わせた、ライフスタイルの改善を勧める方法と、インターミッテントファスティング(16:8アプローチや5:2アプローチ)による減量効果を比較した研究のレビューによると、11件の研究の内9件は、従来のダイエット方法とインターミッテントファスティングの間で、減少した体脂肪に大きな差は見られなかったとしています。
インターミッテントファスティングとアスリートのパフォーマンス
インターミッテントファスティングへの世間の関心が高まる中、いくつかの研究は、様々なファスティングの方法と、アスリートの全体的なピークパフォーマンスの関連について調べています。しかし、各々の研究のインターミッテントファスティングの定義が異なるため、それぞれの研究結果を比較、分析してアスリートがファスティングをする利点、欠点を判断することが困難となっています。
いくつかの研究結果を要約し、その結果を高強度エクササイズ、持久力スポーツ、そしてレジスタンス運動と、運動別に分類した一件のレビューがあります。そのレビューによると、高強度のエクササイズを行うアスリートに、数日から数週間に渡るパフォーマンスの低下が見られました。また、持久力スポーツに参加しているアスリートでは、わずかなパフォーマンスの低下か、殆ど影響が見られなかったと発表しました。なお、レジスタンス運動の選手には、筋肉量の維持にネガティブな影響は全く見られず、かつ脂肪量の減少が見られたとしています。
インターミッテントファスティングがアスリートのパフォーマンスに及ぼす影響を科学的に評価するには、今後行われる研究の方法や形態などの一貫性を高める必要があります。今まで行われてきた研究で矛盾した結果が出ているのは、ファスティングの方法がそれぞれ違う、など統一性に欠けることが原因だと言えます。
インターミッテントファスティングはアスリートのパフォーマンスにネガティブに働く、もしくは全く効果がない、という結果が現在のところでは示唆されていますが、『パフォーマンスへの影響を最小限にしつつ、体重を減少させることができる』という見方もできます。ボクシングやレスリング等、試合前に各クラスの体重制限内に達するために「絞り込み」が必要なスポーツでは、このインターミッテントファスティングは有用かもしれません。
< Recommendation by Our Experts>
- 個々のニーズを考慮する: インターミッテントファスティングの効果はアスリートのタイプや競技に依存するため、自身の運動スタイルや目的を理解し、それに合った食事法を選ぶことが重要です。
- パフォーマンスへの影響を評価する: 高強度エクササイズを行うアスリートではパフォーマンスの低下が見られることがあるため、トレーニングや試合のスケジュールに合わせてファスティングを行う際は、その影響を考慮する必要があります。
- 信頼できる情報源を利用する: さまざまな研究が行われていますが、研究結果に一貫性がないことが多いため、信頼できる情報を基にファスティングの実践を検討し、必要に応じて専門家の意見を聞くことが勧められます。
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< Reference >
- Hatori M, Vollmers C, Zarrinpar A, et al. Time-Restricted Feeding without Reducing Caloric Intake Prevents Metabolic Diseases in Mice Fed a High-Fat Diet. Cell Metabolism. 2012;15(6):848-860. doi:10.1016/j.cmet.2012.04.019
- Rynders CA, Thomas EA, Zaman A, Pan Z, Catenacci VA, Melanson EL. Effectiveness of Intermittent Fasting and Time-Restricted Feeding Compared to Continuous Energy Restriction for Weight Loss. Nutrients. 2019;11(10):2442. doi:10.3390/nu11102442
- Levy E, Chu T. Intermittent Fasting and Its Effects on Athletic Performance: A Review. Current Sports Medicine Reports. 2019;18(7):266-269. doi:10.1249/JSR.0000000000000614