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Evidence-Based Article
インターミッテントファスティングとアスリート
― パフォーマンスとの関係をエビデンスから考える ―
1. なぜこのテーマが重要なのか(臨床的な重要性)
インターミッテントファスティング(Intermittent Fasting:IF)は、
-
16:8(16時間断食+8時間の摂食)
-
5:2(週2日はカロリー大幅制限)
-
1日1食(OMAD) など
「時間制限型」の食事法として、一般層だけでなくアスリートの間でも関心が高まっています。
しかしアスリートにとって重要なのは、
「痩せるかどうか」だけでなく、
「パフォーマンスやトレーニングの質にどう影響するのか?」
です。
ここでは、インターミッテントファスティングが
体重・体脂肪・健康指標・パフォーマンス にどう関わるのかを、
現時点のエビデンスベースで整理します。
2. インターミッテントファスティングとは?(基礎整理)
インターミッテントファスティングは、
「何を食べるか」よりも「いつ食べるか」に重点を置いた食事パターンです。
代表的な方法:
-
16:8 アプローチ
1日のうち 8時間のみ摂食、残り16時間は断食 -
5:2 アプローチ
週2日(連続しない日)だけ大きくカロリー制限 -
イート・ストップ・イート
週1〜2回、24時間断食 -
OMAD(One Meal A Day)
1日1食のみ摂取
宗教的慣習としての断食(ラマダンなど)もあり、
歴史的には古くから行われてきた行動様式でもあります。
インターミッテントファスティングの生理学的な背景としては:
-
摂食しない時間が長くなる
→ 遊離脂肪酸(FFA)の動員増加
→ 脂肪酸の酸化(Fat oxidation)亢進
→ ケトン体産生の増加
といったプロセスが挙げられます。
3. 減量効果:従来のダイエットと比べてどうか?(Evidence Summary)
インターミッテントファスティングは「ダイエット効果」が強調されがちですが、
従来の 持続的エネルギー制限(CER)+運動 と比較したレビューでは、興味深い結果が出ています。
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16:8・5:2 などの IF と
-
「1日あたりのカロリーを一定量制限する従来型ダイエット(CER)」
を比較した11件の研究のうち、9件は体脂肪減少量に大きな差がなかった と報告。
つまり、
「IFだから特別に痩せる」というより、
「トータルの摂取カロリーが抑えられているかどうか」の方が決定的、
という解釈が妥当です。
4. インターミッテントファスティングとアスリートのパフォーマンス(Clinical Interpretation)
アスリートを対象とした研究はまだ限られており、
さらに「IF の定義・方法」が研究ごとに大きく異なるため、結果の解釈が難しいという問題があります。
あるレビューでは、IF の影響を 運動様式別 に整理しています:
● 高強度エクササイズ(スプリント系・インターバル系)
-
数日〜数週間にわたり、
パフォーマンス低下が見られた という報告あり。 -
高強度運動では、
糖質利用が重要になるため、
摂食タイミングや炭水化物量が制限されるとパフォーマンスにマイナスに働く可能性があります。
● 持久系スポーツ(エンデュランス)
-
影響は「わずかなパフォーマンス低下」か「ほとんど影響なし」という報告が多い。
-
ただし、トレーニング内容・競技レベル・ファスティング方法などが研究間でバラバラであり、
はっきりした結論は出ていません。
● レジスタンストレーニング(筋力・筋肥大系)
-
レビューによると、
-
筋肉量の維持には ネガティブな影響はほとんど見られなかった
-
一方で、脂肪量の減少 は認められた
-
-
つまり、筋量を維持したまま体脂肪を落とす「ボディコンポジション調整の一つの戦略」としては、一定の可能性があります。
5. 体重調整が必要な競技における IF の位置づけ
ボクシング・レスリング・柔道などの 体重階級制スポーツ では、
-
「短期間での減量」
-
「パフォーマンス低下を最小限にしながら体重を絞る」
ことが重要なテーマになります。
現時点のエビデンスからは:
IF は「パフォーマンス向上メソッド」というより、
「パフォーマンスへのマイナスをなるべく抑えながら体重を落とすための一つの手段」
として使われる可能性が示唆されます。
ただし、
-
試合直前にいきなり導入しない
-
オフシーズン・プレシーズンから試し、
自分の体調・パフォーマンスへの影響を確認する -
競技特性・ポジション・練習量を考慮したうえで、個別判断が必要
といった慎重な運用が前提となります。
6. 実践のポイント(Practical Application)
1)「痩せるかどうか」だけで選ばない
-
IF は 従来のカロリー制限と同程度の減量効果 であることが多い
-
「時間制限」というルールが合う人には続けやすい一方、
空腹時間が長く トレーニングの質が下がる人 もいる
2)自分の競技・トレーニングスケジュールと合わせて考える
-
高強度トレーニングや試合の直前に「断食状態」にならないようにする
-
重要セッションの前には、
-
十分な糖質摂取
-
消化に問題のない食事タイミング
を優先する
-
3)減量目的なら「ツールの一つ」として位置づける
-
IFが合う人:
→ 食事時間を制限した方が「食べ過ぎをコントロールしやすい」 -
IFが合わない人:
→ 空腹ストレスが大きく、暴食やパフォーマンス低下につながる
どちらもあり得るため、
「IFありき」ではなく、
「ライフスタイル・競技特性・性格に合うか」という視点が重要です。
4)医療的リスクのある人は必ず専門家と相談
-
糖尿病
-
低血糖を起こしやすい人
-
摂食障害の既往がある人 など
は、自己判断での断食は危険を伴うため、
医師・栄養士などの専門家と相談の上で検討する必要があります。
< 要点:Key Takeaways >
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インターミッテントファスティングは、「時間制限型」の食事法で、
減量・代謝改善の選択肢の一つ。 -
従来の持続的エネルギー制限(CER)と比べ、
体脂肪減少量には 大きな差が出ないことが多い。 -
高強度種目のアスリートでは、IF によりパフォーマンス低下が見られる報告がある。
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持久系では、影響は小さいか、ほとんどないケースもあるが、研究方法のばらつきが大きく、結論は不明。
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レジスタンス系では、筋量を維持したまま脂肪を減らせる可能性が示唆されている。
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体重階級制スポーツでは、「パフォーマンス低下を最小限にしつつ減量する戦略」の一つになりうる。
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ただし、現時点では
「アスリートのパフォーマンスを確実に上げる食事法」
とまでは言えず、慎重な個別判断が必要。
< Reference >
- Hatori M, Vollmers C, Zarrinpar A, et al. Time-Restricted Feeding without Reducing Caloric Intake Prevents Metabolic Diseases in Mice Fed a High-Fat Diet. Cell Metabolism. 2012;15(6):848-860. doi:10.1016/j.cmet.2012.04.019
- Rynders CA, Thomas EA, Zaman A, Pan Z, Catenacci VA, Melanson EL. Effectiveness of Intermittent Fasting and Time-Restricted Feeding Compared to Continuous Energy Restriction for Weight Loss. Nutrients. 2019;11(10):2442. doi:10.3390/nu11102442
- Levy E, Chu T. Intermittent Fasting and Its Effects on Athletic Performance: A Review. Current Sports Medicine Reports. 2019;18(7):266-269. doi:10.1249/JSR.0000000000000614


