Physio Academia:

Evidence-Based Article

ドライニードルとは何か:科学的根拠と臨床での活用法

1. なぜドライニードルが注目されているのか(臨床的な重要性)

ドライニードル(Dry Needling)は、欧米を中心に理学療法士やスポーツ医療の専門家が用いる筋骨格系の治療手法です。
超細の鍼をターゲット組織に直接挿入し、筋緊張の低下、疼痛の軽減、可動域の改善を狙う 科学的アプローチ であり、薬剤を使用しないため “ドライ” と呼ばれます。

日本では医師や鍼灸師のみが施術可能ですが、近年研究の蓄積により その効果と安全性が高く評価 されています。

2. ドライニードルと鍼治療の違い(Evidence Summary)

両者は「鍼を使う」という点は同じですが、理論的背景・目的・作用機序 が全く異なります。

■ ドライニードル(Western Dry Needling)

  • 目的:筋・筋膜・トリガーポイントへの直接刺激による痛み軽減・機能改善

  • 基礎理論:神経筋骨格系の科学、トリガーポイントモデル

  • 研究:疼痛科学・筋膜機能・組織生理学など(Dommerholt, 2006; 2011)

  • アプローチ:局所の組織にピンポイントでアプローチ

■ 鍼治療(Traditional Acupuncture)

  • 目的:経絡・ツボを刺激し、身体のエネルギー(気)の流れを整える

  • 基礎理論:東洋医学(ツボ・経絡・気)

  • 歴史:数千年の臨床経験に基づく体系

  • 用途:全身調整、症状緩和

■ まとめ

  • ドライニードル:局所組織への科学的刺激による機能改善

  • 鍼治療:身体全体のエネルギーバランス調整

どちらが優れているという話ではなく、目的が異なることが重要です。

3. ドライニードルの効果と科学的根拠(What the Research Says)

最新の研究では、ドライニードルが以下の生理学的変化を引き起こすことが示されています:

● 組織レベルでの変化

  • 局所血流の改善

  • コラーゲン生成の促進

  • 組織酸素飽和度の上昇

  • 神経伝導速度の改善
    (Dunning, 2014; Zhou, 2015)

● パフォーマンス・痛みに対する効果

  • 可動域の増加

  • 筋力改善

  • 短期的な疼痛緩和効果(多くのRCTで支持)

● 電気刺激(E-stim)併用の利点

微弱電流を流すと:

  • βエンドルフィン上昇

  • コルチゾール低下
    鎮痛効果がさらに向上

● 包括的アプローチの重要性

Fernández-de-las-Peñas (2019) は、最大の効果を得るために:

  • 痛みの教育(Pain Neuroscience Education)

  • 運動療法

  • 徒手療法

と併用することを推奨しています。

4. ドライニードルが臨床で使われるケース(Clinical Interpretation)

ドライニードルは、以下の筋骨格系症状に広く使用されています:

● 慢性期・亜急性期での活用例

  • 変形性膝関節症

  • 梨状筋症候群

  • 足底筋膜炎

  • 慢性肩こり・頑固な筋緊張

  • 反復性スポーツ障害

● 急性期での例

少数ながら、急性痛のマネジメントに使用したケースも報告。

● スポーツ現場での活用

  • 試合前:筋緊張の改善、パフォーマンス準備

  • 試合後:リカバリー促進

組織特異性が高く、スポーツ選手のコンディショニングと相性が良いことが特徴です。

5. 臨床での実践ポイント(Practical Application)

安全で効果的に行うために:

  • 目的を明確に:可動域改善?痛み軽減?パフォーマンス?

  • 対象組織(筋・筋膜・腱・靭帯)を正確に評価

  • 他の治療(徒手、運動療法、教育)と併用する

  • 刺激量を個別に調整(過刺激は逆効果)

  • 衛生管理・禁忌を徹底

ドライニードルは単独の“魔法のツール”ではなく、包括的リハビリの一部です。

< 要点:Key Takeaways >

  • ドライニードルは科学的根拠に基づく筋骨格系治療である。

  • 東洋鍼とは目的・理論が異なる(局所 vs. 全身)。

  • 短期的な疼痛軽減、血流改善、組織回復促進に効果がある。

  • 電気刺激併用で鎮痛効果が増強。

  • 最も良い結果は 運動療法・徒手療法・教育との併用 により得られる。

  • スポーツ選手のコンディショニング・回復にも応用される。

< Reference >

  • Dommerholt J, Mayoral Del Moral O, Gröbli C. Trigger Point Dry Needling. Journal of Manual & Manipulative Therapy. 2006;14(4):70E-87E. doi:1179/jmt.2006.14.4.70E
  • Dommerholt J. Dry needling — peripheral and central considerations. Journal of Manual & Manipulative Therapy. 2011;19(4):223-227. doi:1179/106698111X13129729552065
  • Meakins A. Acupuncture: what’s the point? Br J Sports Med. 2017;51(6):484-484. doi:1136/bjsports-2016-096248
  • Pyne D, Shenker NG. Demystifying acupuncture. Rheumatology. 2008;47(8):1132-1136. doi:1093/rheumatology/ken161
  • Dunning J, Butts R, Mourad F, Young I, Flannagan S, Perreault T. Dry needling: a literature review with implications for clinical practice guidelines. Phys Ther Rev. 2014;19(4):252-265. doi:1179/108331913X13844245102034
  • Zhou K, Ma Y, Brogan MS. Dry needling versus acupuncture: the ongoing debate. Acupunct Med. 2015;33(6):485-490. doi:1136/acupmed-2015-010911
  • Fernández-de-Las-Peñas C, Nijs J. Trigger point dry needling for the treatment of myofascial pain syndrome: current perspectives within a pain neuroscience paradigm. JPR. 2019;Volume 12:1899-1911. doi:2147/JPR.S154728