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Evidence-Based Article
サイクリストがハムストリングをケアすべき科学的理由
〜“忘れられたエンジン”がパフォーマンスを左右する〜
ロードバイク人口が急増する一方で、股関節・膝・腰の痛みなど、サイクリスト特有のオーバーユース障害も増えています。
多くの人が四頭筋・殿筋・ふくらはぎばかりに注意を向けますが、実は パフォーマンスと快適性を支える最重要筋 が “ハムストリング” です。
本記事では、ハムストリングがサイクリングに重要な理由、科学的根拠、そして効果的なケア・トレーニング戦略をまとめます。
1. ハムストリングがサイクリストに重要な理由
ハムストリング(大腿後面筋群)は 股関節伸展 と 膝関節屈曲 の両方に関わる “二関節筋”。
サイクリング中は常にどちらかが曲がった状態になり、筋が ①常に短縮位 → ②硬くなりやすい → ③ケガしやすい という特徴があります。
研究からは以下のような重要性が明らかになっています:
🔹 柔軟性とパフォーマンスが相関
Holliday et al., 2020
→ ハムストリング柔軟性がサイクリングの出力・効率・ポジション設定と関連。
🔹 柔軟性が高いほどエアロ姿勢が取りやすくなる
Holliday et al., 2021
→ 空力的ポジションを無理なく維持できる。
🔹 ペダリング全局面で動的に活動
Silva et al., 2016
→ 上から下まで常に働く “主働筋のひとつ”。
🔹 サドル圧分布にも影響
Vicari et al., 2024
→ ハムの硬さが不快感・安定性・長時間走行に影響。
✔ 結論:
ハムストリングは「補助筋」ではなく、
パワー・姿勢・快適性を同時に左右する中心的な筋肉。
2. ハムストリングが疲れやすく硬くなるメカニズム
① 短縮位での長時間反復
サドルポジションでは完全伸展が起こらない → 常に軽い収縮状態。
② ペダリングの反復ストレス
筋の伸張−短縮サイクルが早く、微細損傷が蓄積。
③ 筋力バランスの偏り
四頭筋ばかり強く、ハムが弱いと膝への負担が増加。
④ 骨盤ポジションの影響
骨盤後傾が強いとハムがさらに短縮し、腰痛につながる。
3. 科学的にわかっている主なリスク
ハムストリングが硬い・弱いと:
🔸 ペダリング効率の低下
🔸 サドル不快感の増加
🔸 膝痛(特に後方・内側)
🔸 腰痛
🔸 ケガの再発リスク
つまり、ハムを無視することは 性能低下+障害リスク上昇 に直結します。
4. サイクリストが行うべき科学的ケア & トレーニング
① エキセントリック(伸張性)トレーニングが最も効果的
例:
-
ノルディックハムストリング
-
ルーマニアンデッドリフト
-
スライダーレッグカール
研究では:
✔ 損傷率を 8〜70% 減少
✔ 筋線維長(fascicle length)増加
✔ 筋力バランス改善
→ サイクリストに最も必要な “耐久性とコントロール” を育てる。
② 軽度サイクリングによるウォームアップ
-
筋の硬さを 3% 減少
-
ROMを 2.9% 改善
→ 走行前のウォームアップとして非常に有効。
③ ケガ後は48時間以内に早期リハビリ開始
研究では早期介入が:
✔ 回復期間短縮
✔ 組織修復の質改善
を示しています。
5. アスリート向け実践ガイド
🔶 週2〜3回:エキセントリック強化
ノルディック or RDL を中心に。
🔶 毎走行前:5–10分の軽度サイクリングウォームアップ
🔶 柔軟性維持:ストレッチ+動的可動性ドリル
骨盤ポジション改善にも効果。
🔶 ケガしたら早期に専門家へ
特に大腿後面の鋭い痛みは要注意。
6. まとめ:ハムストリングを制する者が長距離を制す
ハムストリングはサイクリングの:
✔ 出力
✔ 姿勢
✔ 安定性
✔ 快適性
すべてに関わる “見落とされがちなエンジン” です。
硬く弱いハムは、
パフォーマンス低下 → 痛み → ケガ → 慢性化
という悪循環につながります。
だからこそサイクリストは:
-
エキセントリックで鍛える
-
柔軟性を維持する
-
ケガ後は早期対応する
この3点を徹底すれば、走りの質は劇的に変わります。
< 要点:Key Takeaways >
✔ エキセントリックを最優先で取り入れましょう
パフォーマンス向上とケガ予防に最もエビデンスがある方法です。
✔ ウォームアップを“短くても必ず”行う
たった数分でも筋の硬さと動きが大きく変わります。
✔ 痛みが出たら早期評価を
大腿後面の痛みはサイクリスト特有の損傷に発展する可能性があるため、専門家の評価が重要です。
< Reference >
- Holliday, Wendy, and Jeroen Swart. “Performance Variables Associated with Bicycle Configuration and Flexibility.” Journal of Science and Medicine in Sport 24, no. 3 (2021): 312–17. https://doi.org/10.1016/j.jsams.2020.09.015.
- Holliday, Wendy, and Jeroen Swart. “Anthropometrics, Flexibility and Training History as Determinants for Bicycle Configuration.” Sports Medicine and Health Science 3, no. 2 (2021): 93–100. https://doi.org/10.1016/j.smhs.2021.02.007.
- Da Silva, Julio Cézar Lima, O. Tarassova, M. M. Ekblom, E. Andersson, G. Rönquist, and A. Arndt. “Quadriceps and Hamstring Muscle Activity during Cycling as Measured with Intramuscular Electromyography.” European Journal of Applied Physiology 116, no. 9 (2016): 1807–17. https://doi.org/10.1007/s00421-016-3428-5.
- Vicari, Domenico Savio Salvatore, Antonino Patti, Valerio Giustino, et al. “Hamstring and Lower Back Muscles Flexibility as Predictor of Saddle Pressures in Young Off-Road Cyclists.” Frontiers in Sports and Active Living 6 (October 2024): 1472550. https://doi.org/10.3389/fspor.2024.1472550.
- Rudisill, Samuel S., Nathan H. Varady, Michael P. Kucharik, Christopher T. Eberlin, and Scott D. Martin. “Evidence-Based Hamstring Injury Prevention and Risk Factor Management: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials.” The American Journal of Sports Medicine 51, no. 7 (2023): 1927–42. https://doi.org/10.1177/03635465221083998.
- Morales‐Artacho, A. J., L. Lacourpaille, and G. Guilhem. “Effects of Warm‐up on Hamstring Muscles Stiffness: Cycling vs Foam Rolling.” Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports 27, no. 12 (2017): 1959–69. https://doi.org/10.1111/sms.12832.
- Verplancke, B., S. Adam, G. Naessens, A. Vermeersch, and G. Stassijns. “Behandeling van Hamstringblessures Bij Sporters: Een Narratieve Review.” Tijdschrift Voor Geneeskunde En Gezondheidszorg, ahead of print, September 17, 2025. https://doi.org/10.47671/TVG.81.25.010.


