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超音波治療は本当に効果があるのか?
それともただの“音波”?

はじめに:よく使われるけれど賛否両論の治療

痛みがあって外来クリニックを訪れると、超音波治療を受けたことがある方も多いのではないでしょうか。ジェルを塗り、プローブを当て、じんわり温かくなる気がするあの治療です。

「血流を促進して組織の回復を助ける」と言う人もいれば、「正直、意味がない」「プラセボ(気のせい)だ」と否定的な意見もあります。

果たして、科学的にはどうなのでしょうか? 本当に効果があるのか、それともただの“音波”だけなのか。エビデンスをもとに解説していきます。

超音波治療とは?:連続モードとパルスモードの違い

理学療法で使われる超音波治療は、高周波の音波を利用して筋肉・腱・靭帯などの軟部組織に微細な振動を与える治療法です。これにより、細胞の活動や血流、組織修復を促すと考えられています。

モードには大きく2種類あります:

  • 連続モード(100%デューティーサイクル):常に音波を出し続け、熱を発生させるタイプ。慢性痛や拘縮に用いられることが多い。
  • パルスモード(50%デューティーサイクル):音波を断続的に出すことで熱の発生を抑え、急性期の炎症などに用いられる。

では、どちらが効果的なのでしょうか?

  • 変形性膝関節症の患者を対象とした研究では、連続・パルスどちらの治療でも痛みと機能の改善が見られ、明確な差はありませんでした。
  • テニス肘(外側上顆炎)でも、両者とも改善効果があり、優劣は見られませんでした。
  • 一方、動物実験では連続モードがわずかに筋線維の肥大を促したという報告もあります。

つまり、どちらのモードも臨床的にはほぼ同等の効果を示しているといえます。

超音波治療
骨

超音波治療は本当に効くのか?

このテーマこそ議論が分かれるところです。
超音波治療の有効性は、使用方法目的とする組織によって大きく異なります。

中でも注目されているのが、低出力パルス超音波(LIPUS)です。

  • 骨折治癒を促進し、回復期間を短縮することが報告されています。
  • LIPUSは細胞膜上のインテグリンを活性化し、メカノトランスダクション経路を介して血管新生・骨形成・軟骨再生を促します。
  • 腱や靭帯、筋損傷でも、LIPUSはコラーゲン配列の改善細胞増殖促進腱の張力強度向上に寄与するとの報告があります。

一方で、すべての研究が一致しているわけではありません。
骨粗鬆症などでは効果が限定的という報告もあり、組織の深さや音波伝達の問題が関係していると考えられています。

つまり、超音波は万能治療ではないものの、適切な目的と条件で使えば回復をサポートするツールとして有効な可能性があります。

    まとめ:音波だけではない、でも魔法でもない

    超音波治療はまったくの無意味ではありませんが、これだけで治るという魔法のような治療法でもありません。

    研究からは、正しく使用すれば痛みの軽減や組織修復の促進に一定の効果があることが示されています。
    ただし、その効果を最大限に引き出すには、運動療法や徒手療法、負荷管理と組み合わせることが重要です。

    超音波は主役ではなく、あくまでサポート役。
    ですが、エビデンスに基づいた正しい使い方をすれば、現代リハビリの中でもまだ価値ある治療手段といえるでしょう。

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