Physio Academia:
Evidence-Based Article
ボディビルダーのための食事 101
〜筋トレ効果を最大化する「マクロ」と「ミクロ」の基本〜
ジムに通い始めて、
「次のアーノルド・シュワルツェネッガーになるぞ!」
と意気込んでいる人は少なくありません。
しかし、筋トレだけでは、理想のカラダには届きません。
本気で筋肉量を増やしたいなら、トレーニングと同じくらい「食事」を戦略的に考える必要があります。
この記事では、
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ボディビルディングで重要な 三大栄養素(マクロ栄養素) の目安
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バルク期/減量期での考え方
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ミクロ栄養素(ビタミン・ミネラル)、サプリメントの位置づけ
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ステロイドの問題点とリスク
を、エビデンスを交えながら整理していきます。
ハードコアなコンテストビルダーだけでなく、**「ちゃんと筋トレの結果を出したい一般トレーニー」**にも役立つ内容です。
1. ボディビルディングとマクロ栄養素の考え方
ボディビルの食事で最も重要なのは、マクロ栄養素(たんぱく質・炭水化物・脂質)のバランスです。
一般的に、筋肥大を目指すボディビルダーは、
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高たんぱく
-
中〜やや低脂質
-
トレーニングを支えるだけの十分な炭水化物
を基本とした食事を行います。(Iraki et al., 2019)
1日の摂取目安(体重1kgあたり)
文献をもとにすると、以下のレンジが現実的なガイドラインになります。
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たんぱく質:1.6〜3.1 g/kg/日
(多くのトレーニーは 1.6〜2.2 g/kg で十分) -
炭水化物:3〜5 g/kg/日
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脂質:0.5〜1.5 g/kg/日
例:体重 80kg の場合
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たんぱく質:128〜248 g
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炭水化物:240〜400 g
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脂質:40〜120 g
幅が広いのは、
-
体脂肪を減らしたいのか
-
体重ごと増やしたいのか
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トレーニング強度・頻度はどれくらいか
といった要因で「適正ゾーン」が変わるからです。
2. まず決めるべきは「目的」
最初に決めるべきことは非常にシンプルです。
今の自分の最優先目標は、
① 筋肉を増やしたいのか
② 体脂肪を減らしたいのか?
筋肉を増やしたい(バルク寄り)の場合
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総摂取カロリーを 「やや余剰(+5〜15%)」 に設定
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炭水化物・脂質をやや多めに設定して、トレーニングのパフォーマンスを最大化
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たんぱく質は 1.6〜2.0 g/kg 程度で十分
体脂肪を減らしたい(減量寄り)の場合
-
総摂取カロリーを 「やや不足(−10〜20%)」 に設定
-
炭水化物と脂質を調整して、無理のない範囲でマイナスバランスを作る
-
たんぱく質は筋肉量を守るために 2.0 g/kg 前後 を目安に増やす
いずれの場合も、マクロの管理+体重変化のチェック が必須です。
カロリー計算ツールや食事管理アプリ(例:MyFitnessPal)を用い、週単位で体重と見た目の変化を観察 しながら微調整していくことが重要です。
3. たんぱく質・炭水化物・脂質のポイント
3-1. たんぱく質:筋肉の「材料」
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目安:1.6〜2.0 g/kg/日(一般トレーニー〜中級者)
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減量期やコンテスト期でも、2.2 g/kg 前後までが現実的な範囲
過剰に摂りすぎても、筋肥大効果が比例して増えるわけではありません。
むしろ、消化器への負担や他の栄養素不足を招く可能性があるため、
「高たんぱく=正義」ではなく
「必要十分量+質の高いたんぱく源」 を意識する
ことが大切です。
3-2. 炭水化物:トレーニングの「燃料」
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高強度トレーニングのパフォーマンス維持に必須
-
目安:3〜5 g/kg/日
バルク期:
→ トレーニングボリュームが高い人は、5 g/kg 付近まで増やしてもよい場合があります。
減量期:
→ 総カロリーを抑えるために、主に炭水化物と脂質で調整しますが、トレーニングの日のトレ前後には優先的に炭水化物を配置するのが効果的です。
3-3. 脂質:ホルモンと健康のベース
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目安:0.5〜1.5 g/kg/日
-
あまりに脂質を落とし過ぎると、
テストステロン低下やコンディション悪化につながる可能性があります。
魚、ナッツ、オリーブオイルなど、良質な脂質源 から摂ることを意識しましょう。
4. コンテスト減量期と「普通のトレーニー」の違い
コンテスト出場を目指すボディビルダー は、
大会前数ヶ月間にわたり、かなりシビアな減量を行います。
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カロリーを大きく削る
-
筋量維持のため、たんぱく質を高めに設定
-
炭水化物と脂質を段階的に減らす
といった戦略が一般的に用いられます。(Helms et al., 2014)
しかし、
大会に出る予定がないトレーニーが、同じレベルの減量を真似する必要はありません。
むしろ、
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健康的な体脂肪率を維持しながら
-
少しずつ筋肉を増やす or 無理なく脂肪を落とす
くらいのペースで、中長期的に続けられる食事スタイル を作る方が安全で現実的です。
5. 食事回数とタイミング
研究では、1日の総たんぱく質量が同じであれば、
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食事回数は 3〜6回程度 に分けるのが妥当とされています。(Helms et al., 2014)
ポイントは、
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たんぱく質20〜40g程度を 1回あたり で摂取
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それを 1 日に 3〜6 回に分ける
-
トレーニング前後には、炭水化物+たんぱく質を意識的にとる
夜中に無理して起きてまでプロテインを飲む必要はありません。
「1日の合計」と「適度な分割」ができていれば十分 です。
6. サプリメント:主役ではなく「補助」
科学的にある程度効果が示されているサプリメントは、たとえば:
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カフェイン
-
クレアチンモノハイドレート
-
β-アラニン
などが挙げられます。(Chappell et al., 2018)
ただし、どれも
「食事とトレーニングという土台が整っていること」が前提
です。
サプリだけで身体が劇的に変わることはありません。
7. ミクロ栄養素:ビタミン・ミネラルも侮れない
ボディビル系の食事は、どうしても
-
同じ食品の繰り返し
-
「たんぱく質優先」で、野菜・果物が不足しやすい
という傾向があります。
Helms らは、ボディビル選手の栄養摂取を調査し、特定のビタミン・ミネラルが不足しやすいことを指摘しています。(Helms et al., 2014)
対策としては、
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彩りのある野菜・果物を毎食に含める
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魚・卵・乳製品・ナッツなど、多様な食品から栄養をとる
-
必要に応じて、マルチビタミン・ミネラルサプリで補う
いわゆる「子どもの頃から言われてきたこと」――
「ちゃんと野菜も食べなさい」
は、ボディビルダーにとっても非常に大事です。
8. ステロイドの問題:健康と引き換えにしない
現実として、プロレベルのボディビルの世界では、
筋肉増強剤(アナボリックステロイドなど)の使用が広く存在しています。
しかし、これらは
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心血管系リスクの増大
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ホルモンバランスの破綻
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肝機能障害 など
重大な健康リスク を伴います。(Chappell et al., 2018)
Physio Academia としての立場は明確です。
「健康を犠牲にする体づくり」は推奨しない。
長期的な健康とパフォーマンスを両立させることが最優先。
短期的に見栄えのする身体より、
生涯にわたって動ける身体 を目指すことが大切です。
9. まとめ:
「デカくなりたきゃ食え」は正しいが、戦略が必要
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筋トレの成果を最大化するには、マクロ栄養素の設計が必須
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たんぱく質だけでなく、炭水化物と脂質のバランス が重要
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「バルク」か「減量」かをはっきりさせ、カロリーを微調整する
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ミクロ栄養素・サプリメント・健康リスクも含めて、中長期で続けられるスタイルを作る
一気に完璧を目指す必要はありません。
「今より少しだけ良い食事」を積み重ねることが、
最終的に大きな変化につながります。
< 要点:Key Takeaways >
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マクロバランスを「目的」から逆算しましょう。
筋肥大が目的なら「やや余剰カロリー+十分なたんぱく質」、減量なら「やや不足カロリー+高めのたんぱく質」をベースに設計します。 -
たんぱく質だけに偏らず、炭水化物・脂質も戦略的に。
高強度トレーニングを支えるには、炭水化物が「燃料」として不可欠です。脂質はホルモンと健康維持の土台になります。 -
長期的な健康を最優先に。
ステロイドなどの危険な手段に頼らず、エビデンスに基づいた食事とトレーニングで、時間を味方につけて身体づくりを行いましょう。
< Reference >
- Iraki J, Fitschen P, Espinar S, Helms E. Nutrition Recommendations for Bodybuilders in the Off-Season: A Narrative Review. Sports. 2019;7(7):154. doi:3390/sports7070154
- Helms ER, Aragon AA, Fitschen PJ. Evidence-based recommendations for natural bodybuilding contest preparation: nutrition and supplementation. Journal of the International Society of Sports Nutrition. 2014;11(1):20. doi:1186/1550-2783-11-20
- Chappell AJ, Simper T, Barker ME. Nutritional strategies of high level natural bodybuilders during competition preparation. Journal of the International Society of Sports Nutrition. 2018;15(1):4. doi:1186/s12970-018-0209-z
- Gentil P, Barbosa De Lira CA, Paoli A, et al. Nutrition, pharmacological and training strategies adopted by six bodybuilders: case report and critical review. Eur J Transl Myol. 2017;27(1). doi:4081/ejtm.2017.6247
- Ismaeel A, Weems S, Willoughby DS. A Comparison of the Nutrient Intakes of Macronutrient-Based Dieting and Strict Dieting Bodybuilders. International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism. 2018;28(5):502-508. doi:1123/ijsnem.2017-0323


