Physio Academia:
Evidence-Based Article
子どもの運動能力はどう伸ばす?
〜将来どんなスポーツにもつながる「基礎スキル」の育て方〜
近年、世界の舞台で活躍する日本人アスリートは珍しくなくなりました。
野球の大谷翔平選手、テニスの大坂なおみ選手、ゴルフの松山英樹選手、
フィギュアスケートやパラスポーツでも多くの選手が世界で戦っています。
「うちの子にも、将来スポーツを思いきり楽しんでほしい」
「できれば、ケガをせずに長くスポーツを続けてほしい」
そう願う親御さんは多いと思います。
では実際に、
幼少期〜学童期の子どもには、どんな運動をさせると “将来どの競技にもつながる土台” が作れるのか?
本記事では、エビデンスに基づいてわかりやすく整理していきます。
1. まず押さえたい「基礎運動能力」の考え方
お子さんがどのスポーツを選ぶかは、親にも本人にもまだわかりません。
だからこそ幼少期は、特定の競技に偏りすぎるよりも、
どんなスポーツにも共通する「基礎運動能力」「基本動作スキル」をしっかり育てる
ことが大切です。
ここでいう「基礎運動能力」とは、
-
走る・跳ぶ・投げるといった基本動作
-
バランス・リズム感・協調性
-
全身をコントロールする力(自分の身体を思いどおりに動かせるか)
などを指します。
これらがしっかり身についていれば、
サッカーでも野球でもバスケットボールでも、
「新しい動きを覚えるスピード」が格段に変わってきます。
2. 子どもの運動能力を伸ばす「おすすめの運動」
2-1. 走る・跳ぶ・投げる:いちばんの“元本”になる動き
研究によると、走る・跳ぶ・投げるといった基本動作は、
就学前〜小学生の時期における
-
運動能力
-
協調性
-
スピード
を有意に向上させることが示されています。(Oganisyan et al., 2024; Rata et al., 2020)
ポイントは、「遊びの延長として、何度も楽しく繰り返せること」 です。
例えば:
-
色おに(色を指定して走る・止まる)
-
どうぶつごっこ(カエル跳び・ウサギ跳び・クマ歩きなど)
-
玉入れ・ボール投げゲーム
-
けんけんぱ・ジグザグ走・障害物走
など、「ゲーム形式」でテンポよく行うと、
子どもの方から「またやりたい!」と言いやすくなります。
2-2. 自重トレーニングとコンディショニング
成長期の子どもにとって、自分の体重を使った基礎筋力トレーニングはとても重要です。
-
腕立て伏せ(膝つきでも OK)
-
スクワット
-
ランジ
-
プランク
などは、筋力だけでなく「姿勢のコントロール能力」を育てます。
さらに、子どもの筋力トレーニングやコンディショニングに精通した指導者のもとで、
-
軽めのレジスタンスバンド
-
簡単なプライオメトリック(ジャンプ系トレーニング)
を行うと、
-
敏捷性(アジリティ)
-
パワー
-
バランス能力
の向上につながることが報告されています。(Long et al., 2024)
プライオメトリックの例:
-
ボックスジャンプ(低い段差から)
-
その場での連続ジャンプ
-
バービージャンプ(回数・フォームは年齢に合わせて)
ここでも最重要ポイントは、
「フォームを崩してまで無理をさせない」
「疲れてきたら、すぐ休憩・ゲームチェンジ」
です。
2-3. IAAF キッズアスレチックのような専門プログラム
国際陸上競技連盟(World Athletics/旧 IAAF)が開発した
**「キッズアスレチックプログラム」**は、
-
遊びを取り入れた種目構成
-
チーム対抗形式
-
安全性に配慮した設計
により、子どもの
-
協調性
-
スピード
-
筋力
を総合的に育てるよう作られています。(Čillík & Willwéber, 2018)
「真剣な練習」ではなく
“楽しさがベースの運動教育プログラム” であることが特徴で、
-
スポーツを「好きになる」
-
身体を動かす習慣がつく
という意味でも、長期的なメリットが期待できます。
2-4. スピード・筋力・投てきにフォーカスしたプログラム
スピードドリル、基礎筋力エクササイズ、投てき練習をバランスよく組み合わせた
計画的なエクササイズプログラムは、測定可能な身体能力の向上につながる ことが示されています。(Toledo Sánchez et al., 2021)
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短距離ダッシュ(距離は短く、回数少なめから)
-
メディシンボールや柔らかいボールを使った投てき
-
軽いジャンプ・ステップワーク
などを通じて、子どもは
-
身体を動かすことへの「楽しさ」
-
練習を継続する「粘り強さ」
-
集団行動の中での「ルールやマナー」
も身につけていきます。
3. 子どもが避けるべき/慎重に考えるべき運動
3-1. ヘビーリフティング・パワーリフティング
研究上、適切なフォームと指導があれば、ウエイトトレーニングが骨の成長を直接阻害するエビデンスは乏しいとされています。
しかし、
-
高重量を「限界まで」追うヘビーリフティング
-
1RM を競うようなパワーリフティング
は、
-
成長途中の関節・筋肉に過度なストレス
-
テクニック不足によるケガのリスク
を高める可能性があるため、一般的な幼少〜低学年の段階では推奨されません。
3-2. 「避ける」ことも、立派なサポート
親としてできる大事なことのひとつは、
・成長発達に不適切な負荷を“避ける”
・年齢に合った運動を“選んであげる”
ことです。
-
長時間・高強度の一方向だけの反復(例:同じ投球フォームのみを大量反復)
-
痛みを我慢させるトレーニング
-
休息を軽視したスケジュール
は、子どもの「運動嫌い」やケガの温床になりかねません。
4. 結論:
複雑なメニューや高価な器具は必要ありません
子どもの運動能力を伸ばすために必要なのは、
-
走る・跳ぶ・投げるといったシンプルな動き
-
年齢に応じた自重トレーニング・コンディショニング
-
楽しさをベースにした、良質なキッズプログラム
の バランス です。
親が意識したいポイントは、
-
楽しさ優先
「またやりたい!」と思える遊びの中で、自然と運動量が増えること。 -
年齢・発達に合わせる
高リスクなヘビーリフティングや、過度な競争・詰め込みを避けること。 -
多様な動きを経験させる
特定の競技だけに偏らず、いろいろな動きを経験させることで、
将来どのスポーツにもつながる“運動の土台”を育てること。
一つの競技だけに備えるのではなく、
「どんなスポーツにも対応できる身体の基礎」を作る
これが、子どもの将来の選択肢を広げる、最も大きな投資になります。
< 要点:Key Takeaways >
-
楽しさを最優先にした「遊びベースの運動」を増やしましょう。
鬼ごっこ、ボール遊び、ジャンプゲームなど、子どもが自分から動きたくなる環境づくりが第一歩です。 -
年齢と発達に合った負荷を選び、ヘビーリフティングなどの高リスクな運動は避けましょう。
自重トレーニングや軽いジャンプ系エクササイズで、フォーム習得と身体コントロールを優先してください。 -
特定の競技に絞りすぎず、多様な動きを経験させましょう。
走る・跳ぶ・投げる・登る・バランスをとるなど、多彩な動きは将来どのスポーツにもつながる“運動の基礎体力”になります。
< Reference >
- Oganisyan LM, Kosakyan AV, Smbatyan VA. THE INFLUENCE OF ATHLETIC EXERCISES ON THE DEVELOPMENT OF PRESCHOOL CHILDREN MOTOR ABILITIES. Published online 2024:40-50. doi:53068/25792997-2024.1.11-40
- Rață BC, Rață M, Rață G. The Influence of Exercises in Athletics on Teaching Speed and Coordination in 7-8-Year-Old Children. journal. 2021;21(2):5-24. doi:29081/gsjesh.2020.21.2.01
- Long C, Ranellone S, Welch M. Strength and Conditioning in the Young Athlete for Long-Term Athletic Development. HSS Journal®: The Musculoskeletal Journal of Hospital for Special Surgery. 2024;20(3):444-449. doi:1177/15563316241248445
- Čillík I, Willwéber T. Influence of an exercise programme on level of coordination in children aged 6 to 7. jhse. 2018;13(2). doi:14198/jhse.2018.132.14
- Toledo Sánchez M, Mato Medina OE, Prieto Noa J, López Pérez JP. Efectividad del entrenamiento de atletismo en las capacidades físicas condicionales de los niños y adolescentes. REMCA. 2021;4(3):167-173. doi:62452/2pxrw427


