Physio Academia:

Evidence-Based Article

TENSは本当に効くのか?

科学的メカニズムと、アスリートへの実用性

TENS(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation:経皮的電気神経刺激)は、
痛みを一時的に緩和するために広く使用される電気刺激療法です。

低周波の電気刺激を皮膚から神経へ与え、
・痛み信号を抑制
・筋緊張を緩和
・血流を改善
すると考えられています。

家庭用デバイスとしても普及していますが、
実際のところ 科学的にはどこまで効果が確認されているのでしょうか?

1. TENS の仕組み ― なぜ痛みが減るのか?

ゲートコントロール理論(Melzack & Wall, 1965)

最もよく知られているモデルは、
**「痛みの通り道(ゲート)を非痛覚刺激で“閉じる”」**というメカニズムです。

  • 触覚や振動など痛くない刺激が痛みの信号を抑える

  • TENS はその“非侵害刺激”として働き、脊髄で痛み信号をブロック

薬とは異なる痛み調節経路を使うため、
副作用が少ない痛み管理方法とされています。

筋緊張の低下と粘弾性の変化(Taylor, 1997; Fukaya, 2021)

TENS による電気刺激は筋肉に軽い収縮と弛緩を繰り返し起こし、
結果として

  • 筋の粘弾性が変化

  • マッサージ様の効果

  • 血流改善

が生じると報告されています。

2. 本当にリラックス効果があるのか?

研究では以下が確認されています。

✔ 筋緊張の低下(Taylor, 1997)

TENS 使用後、筋緊張の低下とリラクゼーションが観察。

✔ 筋の粘弾性改善(Fukaya, 2021)

筋肉の“硬さ”を客観的に測定した研究でも、
TENS が筋の柔軟性を変化させるという結果。

しかし、

✔ ストレッチ + TENS がストレッチ単独を上回るとは限らない(Maciel, 2008)

つまり、
TENS は単独の治療というより “補助療法” として使うのが妥当
ということです。

3. 日常生活やセルフケアでの上手な使い方

TENS は市販で手軽に購入でき、
痛みが出たタイミングですぐに使用できることが大きな利点です。

メリット

  • すぐ効く(短期的な即効性)

  • 肩こり・腰痛・筋肉痛などに手軽

  • トレーニング後のリカバリーとして使いやすい

使用するときの注意点

以下の人は 使用禁止 or 原則医師と相談が必須

  • ペースメーカー

  • 金属インプラント

  • 心疾患

  • がん治療中

  • 知覚鈍麻

  • 感染・創傷

  • 急性骨折

また、
強すぎる刺激や長時間使用は逆効果となるため、

✔ 1ヵ所 3–15 分
✔ 心地よい強さ
✔ 最初は弱い刺激から

が基本です。

4. TENS の限界 ― “根本治療”ではない

ここが最も重要なポイントで、Physio Academia で必ず伝えるべき部分です。

TENS は痛みの“原因”を治すものではない。

  • 関節の不安定性

  • 筋力不足

  • 動作のエラー

  • 炎症源

  • 過負荷管理のミス

これらを変えることは TENS では不可能 です。

したがって、

TENS は「一時的な痛みの軽減ツール」

「運動療法・姿勢改善・筋力トレーニング」の補助として使うのが正しい位置づけ

となります。

    まとめ:TENS は“短期的な痛み管理ツール”として有効

    • 電気刺激により痛み信号を抑制(ゲートコントロール)

    • 筋緊張の緩和・血流改善などの効果

    • 即効性があり、セルフケアで使いやすい

    • しかし 根本治療にはならない

    アスリートでも一般の利用者でも、
    TENS を使用する場合は

    「痛みを軽くするツール」
    「次のアクティブなリハビリにつなぐ橋渡し」

    として活用することが最も効果的です。

    < 要点:Key Takeaways >

    ✔ 弱い刺激から始め、1 箇所 3〜15 分を目安に

    快適な強さが最も効果的。強すぎる刺激は悪化につながることがあります。

    ✔ ストレッチ・運動療法と組み合わせて効果を最大化

    TENS は補助療法であり、根本改善には動作改善・筋力向上が必須です。

    ✔ 禁忌・疾患がある場合は必ず専門家に相談

    ペースメーカーなど、絶対使用禁止となるケースが存在します。

    < Reference >

    • Teoli D, An J. Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation. In: StatPearls. StatPearls Publishing; 2024. Accessed April 22, 2024. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK537188/
    • Sluka K, Smith HS, Walsh DM. Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation (TENS). In: Neuromodulation. Elsevier; 2009:335-344. doi:10.1016/B978-0-12-374248-3.00025-2
    • Melzack R, Wall PD. Pain mechanisms: a new theory. Science. 1965;150(3699):971-979. doi:1126/science.150.3699.971
    • Taylor DC, Brooks DE, Ryan JB. Viscoelastic characteristics of muscle: passive stretching versus muscular contractions: Medicine &amp Science in Sports &amp Exercise. 1997;29(12):1619-1624. doi:1097/00005768-199712000-00011
    • Fukaya T, Nakamura M, Sato S, et al. Influence of stress relaxation and load during static stretching on the range of motion and muscle–tendon passive stiffness. Sport Sci Health. 2021;17(4):953-959. doi:1007/s11332-021-00759-2
    • Maciel A, Câmara S. Influência da estimulação elétrica nervosa transcutânea (TENS) associada ao alongamento muscular no ganho de flexibilidade. Rev bras fisioter. 2008;12(5):373-378. doi:1590/S1413-35552008000500006