Physio Academia:
Evidence-Based Article
キネシオテープは本当に効くのか?
その科学的根拠と、理学療法での上手な使い方
なぜここまで広まったのか
キネシオテープは、1970 年代に日系アメリカ人のカイロプラクター/鍼灸師である 加瀬健三 博士 によって開発されました。
-
140%程度まで伸びる高い伸縮性
-
通気性・防水性があり、数日貼ったまま活動できる
-
関節や筋肉の動きを“固定”ではなく“サポート”する設計
という特徴から、2008 年北京、2012 年ロンドンのオリンピックをきっかけに世界的に普及し、「貼るサポートツール」としてスポーツ現場・一般リハともに広く用いられるようになりました。
一方で、「実際どれくらい効くのか?」という科学的な評価は必ずしも一枚岩ではありません。
ここでは、アスレチックテープとの違い、現在のエビデンス、臨床での使いどころを整理します。
1. キネシオテープ vs アスレチックテープ
アスレチックテープ(非伸縮テープ)
-
目的:固定・制限・安定化(mechanical restraint)
-
特徴:伸びない/短時間使用が前提
-
役割:
-
不安定関節の補強
-
ROM 制限
-
急性期の“ガッチリ固定” など
-
キネシオテープ(伸縮テープ)
-
目的:サポート・感覚入力・循環サポート
-
特徴:
-
約 140%まで伸びる
-
数日貼りっぱなしが可能
-
動きを“止める”のではなく“コントロールしながら許容する”
-
-
使用例:
-
肘外側上顆炎
-
足関節捻挫
-
肩周囲の筋機能サポート など
-
いくつかの研究では、
-
慢性外側上顆炎や足関節捻挫 において、
キネシオテープがアスレチックテープより-
痛みの軽減
-
等速性筋力の改善
に有利だった可能性が示されています。
-
また、敏捷性テスト中に足関節へ使用した場合、
-
アスレチックテープよりも 足関節 ROM を確保しつつパフォーマンスを維持/改善しやすい
という報告もあり、**「固定したくないけど、サポートは欲しい」**場面での有効性が注目されています。
2. キネシオテープの作用メカニズム(考えられていること)
現時点で完全に解明されているわけではありませんが、以下のようなメカニズムが仮説として提案されています。
① 皮膚と筋膜を“持ち上げる” → 循環改善
-
テープによる 軽いリフトアップ効果 で皮膚と筋膜の間にスペースが生じる
-
それにより
-
局所の血流・リンパ流が改善
-
浮腫・うっ血の軽減
-
疼痛物質のクリアランス促進
に寄与すると考えられています。
-
② 感覚入力の変化 → 疼痛抑制・固有受容の改善
-
テープ刺激が皮膚・筋膜の受容器を刺激し、
ゲートコントロール機構などを通して痛みの知覚を抑制 -
筋肉・腱・関節からの 固有受容フィードバック が増え、
-
姿勢・アライメント
-
動作のコントロール
に良い影響を与える可能性があります。
-
興味深い報告として、
-
非利き手側の方が、キネシオテープによる固有受容フィードバック増強の影響を受けやすい
とする研究もあり、“感覚を入れてあげたい側” への使用という視点も重要です。
③ 筋・関節のサポート
-
筋線維や筋膜の走行に沿って貼付することで
→ 過剰収縮や過伸張を抑えつつ、動き自体は許容 -
関節をまたいで貼付することで
→ 過度な方向へのストレスを軽減し、「なんとなく不安」な関節に安心感を与える
結果として、
-
ROM の改善
-
協調性・バランスの改善
-
動作の再学習の手助け
などが起きる可能性が示されています。
3. 何に効きそうか?エビデンスのざっくり整理
痛み・機能障害への効果
一部のレビューでは、頸部・腰部・肩・膝・下肢など、
様々な部位で
-
痛みの軽減
-
機能スコアの改善
が報告されています。
ただし多くは
-
効果は “小〜中程度”
-
短期的(数日〜数週間) の変化
-
単独ではなく「運動療法+キネシオテープ」といった“併用”の中での効果
という点に注意が必要です。
パフォーマンス/スポーツシーン
-
足関節捻挫後の敏捷性・ROM
-
テニス選手の肩機能
-
末梢神経障害を持つ人のバランス・運動能力
などで、ポジティブなデータも報告されています。
ただし、
「キネシオを貼るとパフォーマンスが劇的に上がる」
というレベルの一貫したエビデンスは まだありません。
現実的には、
-
痛みや不安を少し減らしつつ
-
安全に動き出しやすくする
という “サポート役” としての価値が中心です。
4. 研究の限界・注意点
いくつかのレビューや研究は、以下の点を指摘しています。
-
研究デザイン・サンプルサイズ・貼り方のプロトコルがバラバラ
→ 結果の一貫性に欠ける -
長期的な効果(数ヶ月単位)のエビデンスはまだ乏しい
-
「キネシオテープ単独で治療を完結させる」のは推奨されない
→ あくまで “運動療法等の補助” という位置づけが妥当
また、副作用として
-
皮膚かぶれ
-
かゆみ
-
発赤・アレルギー反応
などが一定数報告されており、
-
傷の上への貼付
-
強い皮膚炎がある部位
には使用すべきではありません。
5. 臨床での「現実的な」使い方
① 貼付前の準備
-
皮膚を 清潔・乾燥 させる
-
毛深い部位は、必要に応じて剃毛して密着性を上げる
-
初回は 小さい範囲から試し貼り し、皮膚トラブルの有無を確認
② 貼り方の基本イメージ
-
筋サポート目的
-
筋の起始 → 停止に向かって
-
筋を軽く伸ばした肢位で貼付
→ 過剰な伸張や収縮を抑えつつ、筋出力や感覚入力をサポート
-
-
関節安定目的
-
関節をまたいで貼付
-
軽く曲げた肢位で貼り、“行かせたくない方向”へ抵抗がかかるように設計
-
③ どんな場面で役立ちやすいか
-
足関節捻挫後、スポーツ復帰初期の不安定感
-
慢性外側上顆炎、膝・肩周囲の慢性痛
-
遅発性筋肉痛(DOMS)の軽減サポート
-
末梢神経障害で、感覚入力を少し増やしたいケース
-
「痛みは強くないが、怖くて力が入りにくい」場面のブリッジ
④ 患者さんへの説明のポイント
-
**「貼っただけで治るテープではない」**ことを最初に伝える
-
メインはあくまで
-
運動療法
-
荷重・負荷管理
-
生活動作の修正
-
-
キネシオテープはその補助として
-
痛み・不安を少し下げる
-
動き出しを助ける
役割であることを共有しておくと、過度な依存を防げます。
-
まとめ
-
キネシオテープは、
-
伸縮性
-
通気性・防水性
に優れた “動きを許容するテーピング” で、アスレチックテープとは目的が異なります。
-
-
エビデンスとしては、
-
短期的な痛み軽減・機能改善
-
ROM・バランス・固有受容の改善
の可能性を示す研究がある一方、 -
効果の大きさはおおむね小〜中
-
長期効果や単独治療としての有効性は不明
という、やや限定的な内容です。
-
-
現実的な位置づけとしては、
「運動療法+負荷管理+教育」という EBP のベースの上にのる“補助ツール”
であり、「貼れば何とかなる魔法のテープ」ではありません。
< 要点:Key Takeaways >
-
正しい貼付方法を、専門家から学びましょう
-
目的(痛み軽減、関節安定、筋サポート)によって貼り方は変わります。
-
理学療法士やアスレチックトレーナーなど、キネシオテープに習熟した専門家から、個々の症状に合った貼り方を学ぶことをおすすめします。
-
-
単独の“治療”ではなく、あくまで補助として使いましょう
-
キネシオテープは痛みの軽減や機能改善に役立つ可能性がありますが、
メインはあくまで 運動療法・筋力トレーニング・動作修正 です。 -
貼ることがゴールにならないよう、「リハビリ+テープ」というセットで考えましょう。
-
-
皮膚トラブルと過信に注意しましょう
-
かゆみ、赤み、水疱などの皮膚トラブルが出た場合は、すぐに剥がして専門家に相談してください。
-
「テープがあるから無理をしても大丈夫」と思い込まず、痛みや違和感のサインには耳を傾け、必要に応じて負荷を調整することが大切です。
-
< Reference >
- Abdelmonem AF, Ameer MA, Ghuiba K, Al Abbad AM. Kinesio Taping Versus Athletic Taping in Managing Chronic Golfer’s Elbow in Male Athletes. International Journal of Athletic Therapy and Training. 2023;28(3):156-162. doi:1123/ijatt.2021-0130
- Bicici S, Karatas N, Baltaci G. Effect of athletic taping and kinesiotaping® on measurements of functional performance in basketball players with chronic inversion ankle sprains. Int J Sports Phys Ther. 2012 Apr;7(2):154-66. PMID: 22530190; PMCID: PMC3325641.
- Bravi R, Cohen EJ, Martinelli A, Gottard A, Minciacchi D. When Non-Dominant Is Better than Dominant: Kinesiotape Modulates Asymmetries in Timed Performance during a Synchronization-Continuation Task. Front Integr Neurosci. 2017;11:21. doi:3389/fnint.2017.00021
- Csapo, R., & Alegre, L. M. (2015). Effects of Kinesio® taping on skeletal muscle strength—A meta-analysis of current evidence. Journal of Science and Medicine in Sport, 18(4), 450-456. DOI: 1016/j.jsams.2014.06.014.
- Gramatikova, Mariya & Nikolova, Evelina & Mitova, Stamenka. (2014). NATURE, APPLICATION AND EFFECT OF KINESIO -TAPING. 4. 115-119.
- Sarvestan J, Svoboda Z. Acute Effect of Ankle Kinesio and Athletic Taping on Ankle Range of Motion During Various Agility Tests in Athletes With Chronic Ankle Sprain. Journal of Sport Rehabilitation. 2020;29(5):527-532. doi:1123/jsr.2018-0398
- Savran S, Toprak U, Baltaci G, Bek N. A randomized double-blind comparison of kinesio and athletic taping in the treatment of lateral epicondylitis: Clinical and sonographic outcomes. Published online March 10, 2021. doi:22541/au.161535572.22415727/v1
- Song W, Yang Y. Effect of Kinesio taping on delayed-onset muscle soreness in elite athletes. J Sports Med Phys Fitness. 2022;62(5). doi:23736/S0022-4707.21.12280-7
- Tran L, Makram AM, Makram OM, et al. Efficacy of Kinesio Taping Compared to Other Treatment Modalities in Musculoskeletal Disorders: A Systematic Review and Meta-Analysis. Research in Sports Medicine. 2023;31(4):416-439. doi:1080/15438627.2021.1989432.


