Physio Academia:
Evidence-Based Article
足首の捻挫
実際どう対応するのがベスト?
〜PRICE から POLICE へのアップデート〜
足首の捻挫は、最もよく見られる筋骨格系外傷のひとつです。
多くは「足をひねった」「着地を少しミスした」といった瞬間に、足首外側の靭帯に過度なストレスがかかることで発生します。
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バスケットボール
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バレーボール
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サッカー
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各種コートスポーツ
では、膝のケガに次いで頻度が高いとされ、あるメタアナリシスでは 屋内スポーツで 1000 回の練習につき約 7 回の発生率 が報告されています。
さらに 重症例ほど再発リスクが高く、一度重度捻挫をすると再捻挫率は 70%超 とも言われています。
つまり足首捻挫は、
「放っておけばそのうち治る“軽いケガ”」ではなく、
再発とパフォーマンス低下の入り口になりやすい外傷
と考えた方が現実的です。
この記事では、
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捻挫と骨折の考え方
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PRICE と POLICE の違い
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「安静にしすぎない」ためのエビデンス
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アイスの位置づけ
を整理しながら、現場での具体的なマネジメントを考えていきます。
1. 足首の捻挫とは?何が起きているのか
足首の靭帯は、
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関節の安定化
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“これ以上は行き過ぎ”という方向への過大な動きの制御
という役割を持っています。
捻挫(sprain) は、この靭帯が
強制的に「本来の可動範囲」を越えさせられた結果、
伸ばされすぎる or 部分断裂 / 完全断裂を起こした状態
と捉えられます。
2. 捻挫か?骨折か?現場で意識したいポイント
捻挫でよくみられる症状(典型例)
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痛み(多くは外くるぶし周辺)
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腫れ・発赤
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あざ(皮下出血)
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圧痛
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関節の可動域制限
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不安定感、ぽきぽき感覚
骨折を疑うサイン
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捻挫とは質の違う、鋭い・耐えがたい痛み
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明らかな変形(脱臼や転位)
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患側に ほとんど体重をかけられない
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広範囲の強い腫れ・圧痛
ただし、症状だけで 完全に捻挫と骨折を鑑別することは不可能 です。
最終的な診断は、
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レントゲン
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超音波
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CT / MRI
などを含む医療機関での評価が必須です。
「ひどく腫れている」「体重がのらない」「変形が疑われる」
→ 迷わず医療機関へ送る、という判断基準をチーム内で共有しておくと安全です。
3. PRICE プロトコルの整理
従来からよく知られているのが PRICE です。
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P:Protection(保護)
松葉杖やサポーターで患部へのストレスを減らし、悪化を防ぐ。 -
R:Rest(安静)
ただし現在は「絶対安静」ではなく、ケガした部位への負荷を控えつつ、
それ以外の活動はできる範囲で続ける 相対的安静
が推奨されます。 -
I:Ice(冷却)
痛み・腫れを軽減する目的。
1 回 15 分以内、皮膚を保護しつつ、1〜2 時間空けて繰り返す。 -
C:Compression(圧迫)
弾性包帯などで圧迫し、腫れのコントロールと支持を行う。
きつく巻きすぎないこと(末梢の血流・感覚チェックが重要)。 -
E:Elevation(挙上)
心臓より高い位置に足を挙げて腫れや痛みを軽減。
受傷 24〜48 時間はできるだけ挙上を意識する。
4. POLICE プロトコル:最新の考え方
近年は、PRICE をアップデートした POLICE が推奨されつつあります。
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P:Protection(保護)
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OL:Optimal Loading(最適な負荷)
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I:Ice
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C:Compression
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E:Elevation
最大の違いは、
「Rest(安静)」ではなく「Optimal Loading(最適な負荷)」を強調している点 です。
Optimal Loading(最適な負荷)とは?
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まったく動かさないのではなく、
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治癒を妨げない範囲で、早期から適切な負荷を入れていくこと
を意味します。
ここで使われるアプローチは、いわゆる メカノセラピー:
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痛みを許容できる範囲の可動運動
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軽い荷重練習
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抵抗運動
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徒手療法
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テーピングや装具
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場合によっては物理療法
などを組み合わせながら、「全く動かさない」期間をできるだけ短くします。
PRICE vs POLICE:どちらが良いのか?
ある研究では、足首捻挫患者 109 名を
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PRICE 群
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POLICE 群
に分けて経過を比較したところ、
POLICE 群の方が、回復が早く・機能スコアも良好
という結果が示されています。
つまり、
「守りすぎて何もしない」よりも、
“守りながら、できる範囲で早期から動かす” 方が有利
というのが現在の流れです。
5. 早期からの運動療法のエビデンス
いくつかの研究では、
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RICE(または PRICE)+ 早期の理学療法・足首運動 を行った群
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RICE(PRICE)のみで経過を見た群
を比較した結果、
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背屈可動域の回復が良い
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歩幅・歩行パターンが早期に改善
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必要な治療セッション数が少ない
といったメリットが報告されています。
「痛みがゼロになるまで完全に休んでから動かす」ではなく、
痛みをモニターしながら“許容範囲内で早期に動かす” ことが
再発予防と早期復帰に重要、と考えられます。
6. アイス(寒冷療法)の位置づけ
アイシングについては、
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鎮痛・抗炎症効果は古くから認められている一方、
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「神経筋制御が落ちるのでは?」「動きのキレが悪くなるのでは?」という懸念
もあります。
しかし、ある比較実験では、
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アイシングは 急性期において動的な神経筋制御を有意に悪化させない
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間欠的な凍結療法(短時間 × 複数回)は、
従来型の 20 分連続アイシングよりも 痛み改善が大きい
と報告されています。
現時点での整理としては、
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急性期の痛み・腫れのコントロールには 有効
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長時間連続ではなく、短時間+間欠的に行う
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アイス直後に全力プレーに戻す場合は、
感覚・筋出力の変化を評価しつつ慎重に
という使い方が現実的です。
7. いつ専門家に相談すべきか?
以下のようなケースでは、必ず医療機関 / 理学療法 / スポーツ専門家への相談を考えるべきです。
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明らかな変形、体重がのらない、夜間痛が強いなど骨折が疑われる
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受傷後数日たっても腫れ・痛みがほとんど引かない
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再発を何度も繰り返している(“クセになっている”感覚)
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競技復帰のタイミング・リハ内容に不安がある
まとめ
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足首捻挫は非常に頻度が高く、重症例ほど再発リスクが高い 外傷です。
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応急処置は従来の PRICE から、
「保護しながら最適な負荷を早期から入れていく」POLICE へと考え方がアップデートされています。 -
早期からの適切な運動療法は、
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可動域の回復
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歩行の正常化
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早期スポーツ復帰
に寄与することが示されており、「安静にしすぎない」ことがポイントです。
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アイスは急性期の痛みや腫れのコントロールに有効ですが、
短時間・間欠的に使用 し、凍傷・感覚低下に注意が必要です。
< 要点:Key Takeaways >
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まずは骨折の除外と早期診断を優先する
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体重がのらない、変形がある、腫れや痛みが強い場合は、自己判断せず速やかに医療機関へ。
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捻挫だと思っていても、実は骨折だった……というケースは珍しくありません。
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応急処置は「POLICE プロトコル」を基本にする
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Protection(保護)+ Ice / Compression / Elevation に加え、
Optimal Loading(最適な負荷) をできるだけ早期から導入します。 -
「完全安静」ではなく、痛みをモニターしつつ 安全な範囲での動き・荷重 を進めていきましょう。
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理学療法による早期リハビリを活用する
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足関節の可動域回復、筋力強化、バランス・固有受容覚トレーニングは、
再発予防と競技復帰の質を大きく左右します。 -
セルフケアだけで不安な場合は、スポーツ理学療法士など専門家のサポートを受けることを強くおすすめします。
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