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アキレス腱症

Achilles Tendinopathy in Athletes

アキレス腱症(Achilles Tendinopathy)は、アキレス腱に加わる負荷と、その負荷に適応・回復する能力のバランスが崩れることで生じるLoad-Related Tendon Disorderです。¹⁻⁴

典型的には、

  • 局所的なアキレス腱痛
  • 朝や運動開始時のこわばり
  • 腱の腫脹・肥厚
  • ランニングやジャンプ時の疼痛
  • Calf RaiseやHopなどでの機能低下

がみられます。¹⁻⁵

特にランニング、陸上競技、バスケットボール、バレーボールなど、走る・跳ぶ動作を繰り返すアスリートで重要な問題となります。³

アキレス腱症とは?

アキレス腱は、腓腹筋・ヒラメ筋から生じる力を踵骨へ伝え、

歩行・ランニング・ジャンプ・加速・減速

などで大きな力を扱います。

アキレス腱症では、繰り返されるTendon Loadingに対して腱の適応が十分に追いつかず、痛みや機能低下が生じます。

腱には構造的・機械的特性の変化がみられる場合もありますが、**画像所見だけで症状の重症度や機能を説明できるわけではありません。**¹,³

Midportion vs Insertional

臨床上は大きく2つに分けます。

Midportion Achilles Tendinopathy
一般的に踵骨付着部から約26 cm近位の腱に症状がみられます。⁴

Insertional Achilles Tendinopathy
踵骨へのアキレス腱付着部周囲に症状がみられます。

この違いは単なる「痛む場所」の違いではありません。

Insertional Tendinopathyでは、深い足関節背屈時に踵骨と腱の間に生じるCompressionが治療負荷を考えるうえで重要になります。¹⁰

 

典型的な症状

代表的には、

  • アキレス腱の局所痛
  • 朝のこわばり
  • 運動開始時の痛み
  • ランニングやジャンプでの疼痛
  • Calf Raiseでの症状
  • 腱の圧痛
  • 腫脹または肥厚
  • 長時間または高強度運動への耐性低下

などがあります。¹⁻⁵

重要なのは、**「腱が痛いか」だけではなく、「どの程度の負荷から症状が出るのか」**を見ることです。

人間の身体と神経系に存在する自然な左右差を示すイラスト

なぜアスリートにとって重要なのか?

 

アキレス腱は、走る・跳ぶ競技で非常に高い負荷を繰り返し受けます。

そのためアキレス腱症では、

  • Running volumeの低下
  • Sprint能力の低下
  • Jump能力の低下
  • Reactive Strengthの低下
  • 練習後半での症状増悪
  • トレーニング継続困難
  • 競技復帰の遅延

などにつながる可能性があります。³

また、アキレス腱症は回復に時間がかかる場合が多いことも重要です。

症状が少し改善した時点で急激にRunningやJumping Volumeを戻すと、現在のTendon CapacityをSport Demandが再び上回り、症状が再燃する可能性があります。¹,³

したがってアスリートでは、

Pain Resolution ≠ Return-to-Sport Readiness

と考える必要があります。

Functional Diagnosis

アキレス腱症は基本的にClinical Diagnosisです。¹,²,⁵

診断の中心となるのは、

Pain Location
Palpation
Pain with Tendon Loading
Functional Limitation

という臨床パターンです。

UltrasoundやMRIは必要に応じて補助的に使用しますが、画像を見ただけで診断するものではありません。¹,²

 

Step 1:痛みの位置を確認する

最初にMidportionかInsertionalかを明確にします。

Midportion

踵骨付着部より約2~6 cm近位。⁴

Insertional

踵骨への付着部周囲。

この分類は、その後のLoad Managementにも影響します。

 

Step 2Palpation

症状部位を触診し、

  • Local tenderness
  • Tendon thickening
  • Swelling
  • 症状の再現

を確認します。¹,²

Pain location + Pain on palpationは、臨床的に有用な診断情報となります。²,⁴

ただし、触診だけで確定診断するのではありません。

 

Step 3Load Provocation

腱に負荷を加えて、症状が再現されるか確認します。

代表的には、

  • Single-Leg Heel Raise
  • Repeated Heel Raise
  • Hopping
  • Jumping
  • Running

などです。²,³,⁵

アスリートでは、単純なHeel Raiseだけで問題がない場合でも、より高いEnergy-Storage Demandを必要とするHopやJumpで症状が再現されることがあります。

サッカーのキック動作で蹴り脚と支持脚の異なる役割を示すアスリート

主なSpecial Tests

 

Royal London Hospital Test

症状部位を触診し、その後Active Dorsiflexionを行った状態で再度触診します。

足関節背屈時に圧痛が減少する場合を陽性とする検査です。²,⁵

Midportion Achilles Tendinopathyの診断を補助する検査として使用されます。

 

Painful Arc Sign

アキレス腱の腫脹・圧痛部位を確認した状態で足関節を動かします。

腱内の病変であれば、腱の動きに合わせて症状部位が移動することがあります。

Paratendinous Disorderなどとの鑑別を補助するために使用されます。²,⁵

 

Loading Tests

アキレス腱症では、一般的なOrthopedic Special Test以上に、

実際に腱へ負荷を加えたときの反応

が重要です。

そのため、

  • Single-Leg Heel Raise
  • Repeated Heel Raise
  • Single-Leg Hop
  • Repeated Hops

などもFunctional Diagnostic Testとして有用です。

左右差だけでなく筋力・症状・競技動作など複数の要因から傷害リスクを考える概念図

Diagnostic Clusterはあるのか?

現時点では、

**アキレス腱症に対するGold-Standard Special Testや、 universally validatedされたDiagnostic Clusterはありません。**²

Royal London Hospital TestとPainful Arc Signを組み合わせることで診断精度が改善する可能性はありますが、

2つ陽性なら確定」

というClinical Prediction Ruleではありません。

臨床では、

典型的な痛みの位置
局所圧痛
Tendon Loadingでの症状再現
腱の肥厚や機能低下

を統合して判断します。¹,²,⁵

つまり、

Test Clusterを当てることより、臨床パターンが整合しているか

が重要です。

Functional Assessment

Functional Diagnosisでは「アキレス腱症があるか」だけでなく、

どの程度Sport Functionが失われているか

を評価します。

 

VISA-A

Achilles Tendinopathyで最も広く使用されるPatient-Reported Outcome Measureのひとつです。²,⁵

Pain、Function、Activityへの影響を定量化し、経過を追うために使用できます。

 

Heel-Raise Capacity

確認する項目には、

  • Repetition
  • Strength
  • Endurance
  • 左右差
  • 症状反応

などがあります。

 

Hop / Jump Performance

研究ではAchilles Tendinopathyを有する人では、

  • Single-Leg Hop
  • Figure-of-Eight Hop
  • Lower Extremity Functional Test

などのパフォーマンス低下が報告されています。⁷

一方、Weight-Bearing LungeやY-Balanceでは明確な差がみられないこともあります。⁷

つまり、アキレス腱症ではEnergy-Storageを必要とするExplosive Tasksが特に重要な場合があります。

Prognostic Testing

Functional Testは診断だけでなく予後予測にも役立つ可能性があります。

Mulderらは、

  • Palpation時の痛み
  • 10 Hops後の痛み

が少ない患者ほど、Progressive Calf Exercise後の24週時点でより良好な改善を示す傾向を報告しています。⁶

そのため、

Pain during Loading

は単なる「陽性・陰性」ではなく、SeverityやRecoveryを追跡する指標としても利用できます。

Imagingの役割

UltrasoundやMRIは、

  • Tendon structure
  • Thickening
  • Tendon integrity
  • Differential diagnosis

などを確認するために使用されます。¹,²

しかし、

Imaging is supportive, not diagnostic by itself.

画像上の構造変化とPainやFunctionは必ずしも一致しません。

したがって、Clinical FindingsとImaging Findingsを統合することが重要です。

左右差だけでなく筋力・症状・競技動作など複数の要因から傷害リスクを考える概念図

Treatment & Rehabilitation Overview

アキレス腱症では、基本的にNon-Surgical Conservative Careが第一選択となります。¹,³

治療の中心は、

Education + Load Management + Progressive Tendon Loading

です。

ガイドラインでは、少なくとも約12週間を目安としたCalf Muscle Exercise Therapyを中心に進めることが推奨されています。¹

Phase 1Load Management & Symptom Control

初期の目的は、

完全に負荷をなくすことではなく、現在のTendon Capacityを超える負荷を調整すること

です。

Running、Jumping、Sprint、Sport Practiceなどを症状に応じて調整します。

Pain-Guided Activity Modificationを用いながら、可能な活動を維持することが基本になります。³

Phase 2Tendon Loading & Capacity

次にCalf-Achilles Complexへ段階的に負荷を加えます。

研究では、

  • Isometric loading
  • Concentric loading
  • Eccentric loading
  • Combined concentric-eccentric loading
  • Heavy resistance loading

など、複数の方法で改善が報告されています。³,⁹

現時点では、

すべてのアスリートに対して一つのLoading Methodが明確に最も優れているとはいえません。

大切なのは適切な負荷量を設定し、徐々にTendon Capacityを高めることです。

Phase 3Energy-Storage Loading

筋力が改善しただけではRunningやJumpingへの復帰には十分ではありません。

次に、

  • Hopping
  • Jumping
  • Landing
  • Faster stretch-shortening cycle

など、アキレス腱が素早くエネルギーを吸収・放出する能力を再構築します。⁹

この段階は特にRunningやJumping Athleteで重要になります。

Phase 4Sport-Specific Loading

最終的には、

  • Running volume
  • Sprinting
  • Acceleration / deceleration
  • Cutting
  • Jumping
  • Repeated sport-specific loading

へ段階的に戻します。

Return-to-Sportに対する単一のValidated Cutoffはありません。³,⁸

そのため、

Symptoms + Calf Capacity + Hop/Jump Function + Repeated Load Tolerance + Sport Demand

を組み合わせて判断します。

左右差だけでなく筋力・症状・競技動作など複数の要因から傷害リスクを考える概念図

Insertional Tendinopathyは負荷戦略が異なる

Insertional Achilles Tendinopathyでは、Tendon LoadingだけでなくCompression Managementが重要になります。

2025年のRandomized Clinical Trialでは、

  • 深いDorsiflexionを制限する
  • Calf Stretchingを避ける
  • Heel Liftを使用する

などによって腱の圧迫を減らしたプログラムが、High-Compression Programより12週・24週でVISA-Aを大きく改善しました。¹⁰

したがって、

Midportionに適したLoadingを、そのままInsertional Tendinopathyへ適用するべきではありません。

Psychosocial Factorsも評価する

アキレス腱症の回復は腱の構造や筋力だけで決まりません。

KinesiophobiaやPain Catastrophizingが強い患者では、症状やQuality of Lifeが悪い傾向が報告されています。¹¹,¹²

またAchilles Tendinopathyには、

  • Activity-dominant
  • Function-dominant
  • Psychosocial-dominant
  • Structure-dominant

など異なるClinical Profileが存在し、回復経過も異なる可能性があります。¹¹,¹²

したがって、同じ診断名でも全員に同じRehabilitation Strategyを適用するべきではありません。

< まとめ >

 

Achilles Tendinopathyは、

アキレス腱が現在求められている負荷に十分対応できなくなったClinical Load-Intolerance Syndrome

として理解することが重要です。

診断では、

Pain Location → Palpation → Tendon-Loading Response → Special Tests → Functional Capacity → Imaging when needed

を統合します。

単独のGold-Standard Testや確立されたDiagnostic Clusterはありません。

治療では、

Load Management → Progressive Tendon Loading → Energy-Storage Loading → Sport-Specific Loading

へと段階的に進めます。

そしてMidportionとInsertionalでは、Loading Strategyを同じにしないことも重要です。

アスリートにとって最終的な目標は単に**「痛くなくなること」**ではありません。

走る・跳ぶ・加速する・反復するという競技負荷に、アキレス腱が再び十分耐えられる状態をつくることがリハビリテーションの本質です。

L&R

<PDF File>

< Reference >

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