ロッククライマー
コンディショニング
プログラム

Rock Climber
Conditioning Program

 

ロッククライミングは、筋力・持久力・柔軟性・バランス・技術 を高度に組み合わせるスポーツです。
とくに小さなホールドを保持する指の強さ、壁に張り付くための体幹の安定性、ダイナミックなムーブでの全身連動は、一般的なフィットネスでは代替できません。

適切なコンディショニングを行わないと、

  • 指の慢性障害

  • 腱損傷

  • 肩の不安定性(特にオーバーヘッド動作)

  • 過度の疲労によるパフォーマンス低下
    が起こりやすくなります。

ロッククライミング

エビデンスが示す「クライミングに必要な能力」

① 指・前腕の持久力と握力はパフォーマンスの核心要素

クライマーの成功に最も影響する能力のひとつが、指屈筋群の筋力と持久力 です。
Mackenzieら(2020)は、指・前腕の耐久性が上級者と中級者をわける大きな要因であることを示しています。


② 肩のパワーと安定性が「登り続ける力」を支える

保持・引き上げ・ダイナミックムーブには、肩甲帯とローテーターカフの安定性が不可欠です。
肩が不安定なまま強度の高いムーブを行うと、

  • インピンジメント

  • SLAP損傷

  • 肩前方不安定症
    のリスクが高まります。


③ 体幹持久力は効率的な動作の基盤になる

Langerら(2022)は、体幹持久力と動作効率の高さが、技術習得とパフォーマンス向上に大きく関与すると報告しています。
クライミングは“引く動作”に見えますが、実際には 体幹を固定しながら四肢を動かすスポーツ です。


④ 下半身の力と股関節の可動性はムーブ全体を決定する

多くの初心者は腕で登ろうとしますが、上級者ほど 股関節と下半身の力を効率的に使う ことができます。
股関節外転・外旋筋群の強さは、壁面での安定と効率的なムーブに直結します。


⑤ パフォーマンス向上には筋肥大・最大筋力・持久力の「混合刺激」が必要

研究では、クライマーのトレーニングは
筋肥大(Hypertrophy) × 最大筋力(Strength) × 持久力(Endurance)
の3要素を組み合わせるべきとされています(Langer 2022)。
どれか1つだけでは競技力が伸びにくく、怪我のリスクも増えます。

ロッククライマー

Evidence-Based トレーニング原則

① 指・前腕の筋力と持久力を最優先で鍛える

握力は“筋力そのもの”よりも“持久力”が重要になるため、
指を使う等尺性(Isometric)トレーニングが特に有効です。


② 肩甲帯と肩の安定性を高めることが怪我予防の中心となる

肩の不安定性はクライマーに非常に多いため、

  • 肩甲骨コントロール

  • ローテーターカフの耐久力

  • オーバーヘッドでの安定化
    が必須となります。


③ 体幹の“抗回旋・抗伸展”の能力を鍛える

プランク系の持久力だけでなく、
壁面でのバランスやムーブの安定には、抗回旋(Anti-Rotation)能力 が不可欠です。


④ 下半身の安定性と股関節可動性を高め、ムーブ効率を改善する

ムーブが不安定なクライマーの多くは、

  • 股関節外転・外旋筋が弱い

  • 骨盤の安定性が低い

  • 足の踏み込みが甘い
    という特徴を持っています。


⑤ 筋肥大・最大筋力・持久力トレーニングをバランスよく組み込む

クライミングでは、

  • ダイナミックムーブ(パワー)

  • 壁に張り付く体幹・握力の持久力

  • 多様なホールドに対応する筋量
    すべてが必要です。

1つの刺激だけでは不十分であり、混合型トレーニング が最適と言えます。

< Reference >

  • MacKenzie R, Monaghan L, Masson RA, et al. Physical and Physiological Determinants of Rock Climbing. International Journal of Sports Physiology and Performance. 2020;15(2):168-179. doi:1123/ijspp.2018-0901
  • Langer K, Simon C, Wiemeyer J. Strength Training in Climbing: A Systematic Review. Journal of Strength and Conditioning Research. 2023;37(3):751-767. doi:1519/JSC.0000000000004286