後脛骨筋

Tibialis Posterior

 

足の機能を支える働きと解剖 アスリートのための鍛え方

後脛骨筋(Tibialis Posterior)は、ふくらはぎの深層にある筋肉です。腱は内くるぶしの後方を通り、足部の複数の骨に付着します。内側縦アーチを支え、足を内側へ向ける動きや、足先を下に向ける底屈を補助します。[1,2]

アスリートにとって、この筋の理解は、足部の解剖を実際のトレーニングにつなげる助けになります。目指したいのは、負荷を受け止め、蹴り出しに対応できる足です。同時に、すねや内くるぶしの痛みについて、専門家への相談が必要な場合も知っておくことが大切です。

後脛骨筋の役割とスポーツにおける重要性

動作中の足部を支える

後脛骨筋はアーチの支持に関与し、蹴り出しの際に足部が安定した土台となるように働きます。アーチはこの筋だけで支えられているわけではなく、他の筋、腱、靱帯と協調しています。こうした働きは、ランニングの繰り返しの接地、ジャンプ、着地、方向転換などに関係します。[1,2]

アーチが低いからといって、後脛骨筋が弱いとは限りません。痛みや疾患のない成人を対象とした研究(60人)では、アーチが低い群のほうが、歩行の一部で後脛骨筋の活動が高いという結果でした。代償的に働いている可能性はありますが、その活動が障害の原因であることを示した研究ではありません。足の形、筋活動、筋力、症状は、それぞれ別の情報です。[3]

実践上の目標は、競技に必要な筋力と、快適で状況に対応できる動きです。アーチの高さだけを評価するのではなく、どの動作ができるか、負荷に対して症状がどう変化するか、最近の練習に何が変わったかを確認します。

後脛骨筋とシンスプリントの関係

シンスプリントの一つとして知られるMTSS(medial tibial stress syndrome:脛骨内側ストレス症候群)と、後脛骨筋腱障害は、同じ診断ではありません。 MTSSでは、運動に伴ってすねの内側に痛みが生じ、脛骨の内側縁に沿って比較的広い範囲に圧痛がみられます。[4]

後脛骨筋は足部の動きを制御しますが、この筋だけをMTSSの原因と説明するのは適切ではありません。解剖研究では、後脛骨筋の付着部が引っ張られることだけでは、典型的な痛みの部位を説明しにくいとされています。負荷への間接的な関与まで否定するものではありませんが、MTSSを単純に「後脛骨筋の障害」と捉えるべきではありません。[5]

状態 よくみられる症状のパターン
MTSS 運動に伴うすねの内側の痛み。脛骨の内側縁に沿って、一般に5 cm以上の比較的広い範囲に圧痛がみられます。[4]
後脛骨筋腱の問題 内くるぶしの後方から下方、場合によっては土踏まずにかけての痛みや腫れ。蹴り出しやかかと上げで痛むことがあります。[2]
脛骨の骨ストレス障害 骨の限られた部位に痛みがみられることがあります。悪化すると、通常の歩行、安静時、夜間にも痛む場合があります。[6]

 

これらは評価の手がかりであり、このパターンだけで診断はできません。圧痛の範囲が広いことだけを理由に、骨ストレス障害を除外することもできません。[4,6]

2025年に発表された、MTSSのある市民ランナー40人を対象とする試験では、他の治療に下腿エクササイズを追加すると、足部姿勢の一部の指標と身体的な生活の質が改善しました。一方、痛みやMTSSの重症度に対する、統計学的に有意な追加効果は認められませんでした。 後脛骨筋だけを鍛えた研究ではなく、予防効果を検証した試験でもありません。[7]

後脛骨筋トレーニングは、足部・下腿全体のプログラムに組み込めます。ただし、それだけでMTSSを予防・治療できると説明することは、現在の根拠を超えています。

専門家に相談したい症状

痛みが続く、繰り返す、内くるぶし周辺に腫れがある、アーチの形が徐々に変わってきた場合は、評価を受けましょう。片脚でのかかと上げが難しいことも参考になりますが、それだけで障害されている組織を特定できるわけではありません。[2]

すねの特定の狭い範囲に集中する痛み、通常の歩行での痛み、足を引きずる状態、安静時痛や夜間痛がある場合は、痛みを伴うランニングやジャンプを中止して、早めに評価を受けてください。 骨ストレス障害の可能性があります。選手や保護者は、続くすねの痛みを単なる「成長痛」や、走りながら慣れるべきものと決めつけないことが大切です。[6]

Anatomy|後脛骨筋の解剖

起始(Origin)

脛骨と腓骨の後面、および両骨の間にある骨間膜。[1]

 

停止(Insertion)

舟状骨が主要な付着部です。腱の分枝は楔状骨などの足根骨や、一般に第2〜第4中足骨底にも付着します。細かな付着パターンには個人差があります。[1,8]

 

主な作用(Actions)

足底を内側へ向ける内がえし、前足部を内側へ向ける内転、足先を下へ向ける底屈の補助、および内側縦アーチの動的支持。

この広い停止部は、後脛骨筋が足部の複数の部位に影響する理由の一つです。土踏まずの「一点を持ち上げる筋」と考えるより、足部を協調して支える仕組みの一部と捉えると理解しやすくなります。[1,8]

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後脛骨筋
後脛骨筋

筋活動の研究からわかること

小規模なMRI研究では、抵抗に逆らって足を内転させる運動で、後脛骨筋が比較的選択的に活動しました。片脚でのかかと上げでは、後脛骨筋と他の下腿筋が同時に活動していました。[9] また、健康な成人10人を対象とした2026年の研究でも、抵抗をかけた底屈・内がえし方向のタオルスライドと片脚かかと上げで、高い後脛骨筋活動が認められています。[10]

筋活動が高いことだけでは、筋力の向上、症状の改善、障害予防効果までは示せません。 以下は実践しやすくした運動例であり、各研究の実験条件を完全に再現したものではありません。2026年の論文は、本記事作成時点ではオンライン公開された最終組版前の論文です。

以下は一般的なコンディショニングの例です。現在、すねや内くるぶし周辺に痛みがある場合は、評価に基づいて種目と負荷を選びましょう。

後脛骨筋をトレーニングする効果的なエクササイズ

Exercise 1|軽い底屈位での抵抗内がえし

目的: 足先を少し下に向け、足を内側へ動かす作用に抵抗を加えます。後脛骨筋を狙いやすい動きですが、他の筋も関与します。[1,9]

  1. 下腿を支えて座り、足部を動かせるようにします。
  2. 前足部にバンドをかけ、鍛える足の外側方向に固定します。バンドが足を外側へ引く向きに設定します。
  3. 足先を少し下へ向けた状態で、前足部を内側へ動かします。
  4. 膝や股関節を回さず、戻すときもバンドに急に引かれないように、ゆっくりコントロールします。

ポイント: 足趾を強く握り込まず、無理のない範囲で行います。脚全体を回して代償しないようにしましょう。最初は滑らかに動かせる抵抗を選び、セットを通して同じ動作を保てるようになったら抵抗を増やします。

関連する方法: 座位で前足部を内側へ滑らせる場合は、バンドが前足部を外側へ引く設定を保ちます。滑りやすい床で前足部の下に小さなタオルを置き、かかとを床につけて膝を動かさず、前足部を内側へ滑らせます。別の負荷方法として利用できるものの、他の種目より優れていると確立された方法ではありません。[9,10]

片脚コントロール

Exercise 2|支えを使った両脚かかと上げ

目的: ふくらはぎと足部を支える筋をまとめて鍛えます。後脛骨筋にも負荷がかかりますが、この筋だけを単独で鍛える種目ではありません。[9]

  1. 平らな床で自然な足幅に立ち、壁や安定した台に軽く手を添えます。
  2. 母趾の付け根を含む前足部で床を押しながら、両脚でかかとを上げます。
  3. 反動を使わずに、ゆっくり下ろして繰り返します。

ポイント: 足趾を握り込んだり、足の外側だけに体重を逃がしたりしないようにします。かかとが自然に少し内側へ向くことはありますが、無理に足首をひねる必要はありません。まず床上で行い、段差によって可動範囲を増やす方法は、その後に検討します。

つま先の向きは重要? 健康な男性14人の研究では、つま先を30度内側へ向けたかかと上げで、比較した他の足位より後脛骨筋の活動が高くなりました。ただし、筋活動を比較した研究であり、治療効果の優位性を示してはいません。まずは自然で快適な向きから始め、無理な内股を強制する必要はありません。[11]

片脚コントロール

Exercise 3|支えを使った片脚かかと上げ

目的: 両脚で安定してできるようになったら、負荷を高めます。片脚かかと上げでは、実験研究で後脛骨筋の高い活動が確認されています。[9,10]

  1. 安定した台の横で片脚立ちになり、バランスと動作を保てる程度に手で支えます。
  2. 無理のない範囲でかかとを上げ、ゆっくり下ろします。
  3. 前足部で床を支え、繰り返してもかかとの高さが大きく低下しないようにします。

進め方: 手による補助を減らし、その後、必要に応じてダンベルや重りを入れたリュックなどで負荷を増やします。片脚で上げるのが難しい場合は、両脚で上げ、下ろすときに片側へ少し多く体重をかける方法もあります。これは負荷の調整方法であり、下ろす運動だけが常に優れているという意味ではありません。

かかと上げには、複数の筋、バランス、負荷への耐性が関わります。回数だけで後脛骨筋の弱さを診断したり、競技復帰の可否を決めたりすることはできません。

片脚コントロール

Exercise 4|ショートフットと立位でのコントロール

目的: 筋力トレーニングに、足部全体のコントロールを加えます。足部内在筋も関与する補助的な種目であり、後脛骨筋だけを選択的に鍛えるものではありません。

  1. 座位で、かかと、母趾の付け根、小趾の付け根を床につけます。
  2. 足趾を丸めたり、足の外側に体重を逃がしたりせず、前足部をかかとへわずかに近づけるように、小さく土踏まずをつくります。
  3. 力を抜いて繰り返し、慣れたら立位や、支えを使ったゆっくりした片脚動作へつなげます。

柔軟性のある扁平足を対象とした2024年の試験では、後脛骨筋トレーニングとショートフットを組み合わせたプログラムにより、足部姿勢とバランスの一部の指標に改善がみられました。組み合わせた介入のため、どちらか一つの効果は特定できず、障害予防効果を示した研究でもありません。[12]

片脚コントロール

負荷の選び方と段階的な進め方

以下は実践的なトレーニングの考え方であり、後脛骨筋に特化して効果が検証された統一プロトコルではありません。健康なアスリートであれば、連日を避けて週2〜3回程度の筋力トレーニングから始める方法があります。滑らかな動き、足趾のリラックス、かかとの高さを保ちつつ、十分に負荷を感じる抵抗を選びます。代償動作が主体になる前に、そのセットを終了しましょう。

抵抗、回数、片脚への荷重などを、一度にすべて増やさず、一つずつ進めます。当日後半や翌朝の反応も確認してください。痛みや腫れの増加、足を引きずる状態、症状が強くなったまま戻らない場合は、負荷を下げて見直します。原因が不明なすねの痛みや骨ストレス障害の疑いに、腱障害で使われる「ある程度の痛みは許容する」という考え方をそのまま当てはめないでください。

基礎的な筋力がついたら、繰り返しの下腿負荷、動作中のバランス、着地、ホッピング、ランニング、方向転換など、競技に必要な課題へ進めます。けがから復帰する選手では、かかと上げの回数だけで判断せず、診断と機能評価に基づいて衝撃を伴う運動を進めることが大切です。

すでに後脛骨筋腱に痛みがある場合

段階的な抵抗運動は保存療法の一部になりますが、効果は一様ではありません。初期の後脛骨筋腱機能不全がある成人36人を対象とした2009年の試験では、装具とストレッチに抵抗運動を加えることで、追加の改善が報告されました。[13] 一方、2015年の試験では、装具とストレッチに中等度の自宅筋力トレーニングを追加しても、その上乗せ効果は小さいという結果でした。[14]

これらの対象者は腱機能不全がある人であり、健康なランナーやMTSSの選手ではありません。種目や負荷は個別に調整する必要があります。評価に応じて、靴の見直し、足底装具、一時的な活動量の調整などを組み合わせる場合もあります。[2,13,14]

< Take-Home Message >

後脛骨筋は、アーチの支持と足部のコントロールに関与します。足を内側へ動かす抵抗運動と段階的なかかと上げに、足部全体の練習を組み合わせます。下腿全体の筋力を高め、すねや内くるぶしの痛みが続く場合は評価を受けましょう。

PA Single-Leg Control

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< Reference >

  1. Willegger M, Seyidova N, Schuh R, Windhager R, Hirtler L. The tibialis posterior tendon footprint: an anatomical dissection study. J Foot Ankle Res. 2020;13(1):25. doi:10.1186/s13047-020-00392-1
  2. American Academy of Orthopaedic Surgeons. Progressive collapsing foot deformity (flatfoot). OrthoInfo. Accessed October 25, 2026. https://www.orthoinfo.org/diseases–conditions/posterior-tibial-tendon-dysfunction
  3. Murley GS, Menz HB, Landorf KB. Foot posture influences the electromyographic activity of selected lower limb muscles during gait. J Foot Ankle Res. 2009;2:35. doi:10.1186/1757-1146-2-35
  4. Winters M, Bakker EWP, Moen MH, Barten CC, Teeuwen R, Weir A. Medial tibial stress syndrome can be diagnosed reliably using history and physical examination. Br J Sports Med. 2018;52(19):1267-1272. doi:10.1136/bjsports-2016-097037
  5. Stickley CD, Hetzler RK, Kimura IF, Lozanoff S. Crural fascia and muscle origins related to medial tibial stress syndrome symptom location. Med Sci Sports Exerc. 2009;41(11):1991-1996. doi:10.1249/MSS.0b013e3181a6519c
  6. American Academy of Orthopaedic Surgeons. Stress fractures. OrthoInfo. Accessed October 25, 2026. https://www.orthoinfo.org/diseases–conditions/stress-fractures/
  7. Naderi A, Fallah Mohammadi M, Heidaralizadeh A, Moen MH. Effects of integrating lower-leg exercises into a multimodal therapeutic approach on medial tibial stress syndrome management among recreational runners: a randomized controlled study. Orthop J Sports Med. 2025;13(2):23259671241311849. doi:10.1177/23259671241311849
  8. Uchiyama I, Edama M, Yokota H, et al. Anatomical study of sites and surface area of the attachment region of tibial posterior tendon attachment. Int J Environ Res Public Health. 2022;19(24):16510. doi:10.3390/ijerph192416510
  9. Kulig K, Burnfield JM, Requejo SM, Sperry M, Terk M. Selective activation of tibialis posterior: evaluation by magnetic resonance imaging. Med Sci Sports Exerc. 2004;36(5):862-867. doi:10.1249/01.MSS.0000126385.12402.2E
  10. Watson J, Eshenaur J, McClinton S. Electromyographic investigation of exercises that strengthen the foot’s arch. Journal of Biomechanics Open. Published online September 9, 2026. doi:10.1016/j.jbmo.2026.100026
  11. Akuzawa H, Imai A, Iizuka S, Matsunaga N, Kaneoka K. The influence of foot position on lower leg muscle activity during a heel raise exercise measured with fine-wire and surface EMG. Phys Ther Sport. 2017;28:23-28. doi:10.1016/j.ptsp.2017.08.077
  12. Kirmizi M, Sengul YS, Akcali O, Angin S. Effects of foot exercises and customized arch support insoles on foot posture, plantar force distribution, and balance in people with flexible flatfoot: a randomized controlled trial. Gait Posture. 2024;113:106-114. doi:10.1016/j.gaitpost.2024.05.030
  13. Kulig K, Reischl SF, Pomrantz AB, et al. Nonsurgical management of posterior tibial tendon dysfunction with orthoses and resistive exercise: a randomized controlled trial. Phys Ther. 2009;89(1):26-37. doi:10.2522/ptj.20070242
  14. Houck J, Neville C, Tome J, Flemister A. Randomized controlled trial comparing orthosis augmented by either stretching or stretching and strengthening for stage II tibialis posterior tendon dysfunction. Foot Ankle Int. 2015;36(9):1006-1016. doi:10.1177/1071100715579906