プルアップ
Pull-Up
自分の体重をコントロールしながら引き上げる、上半身の基礎的プル系エクササイズ
Pull-Up(プルアップ)は、頭上のバーを順手で握り、ハングポジションから自分の身体を引き上げる多関節・Closed-Chainの上半身エクササイズです。¹
主に広背筋、上腕二頭筋、上腕筋、前腕筋群へ大きな負荷をかけながら、僧帽筋、菱形筋、ローテーターカフなどの肩甲帯・肩関節周囲筋、さらに体幹筋群が協調して身体をコントロールします。²˒³
つまりPull-Upは単なる「背中の筋トレ」ではありません。
肩関節・肩甲骨・肘・前腕・体幹を連動させながら、自分の体重を空間内でコントロールするエクササイズです。
Exercise Overview|Pull-Upとは?
基本的なStrict Pull-Upでは、
- バーを順手(pronated grip)で握る
- 肘を伸ばしたハングポジションから開始
- 身体をコントロールしたまま引き上げる
- 顎がバーを越える位置まで上昇
- コントロールしながら開始位置へ戻る
という動作を行います。¹
Biomechanical研究では、Pull-Upは単純な肘屈曲だけではなく、肩関節、肩甲帯、体幹、さらに疲労時には下肢まで含めた複雑な協調運動であることが示されています。¹
このTraining Hubでは、反動を使用しない
Strict Pronated Pull-Up
を基本形とします。
How to Perform|Pull-Up の方法
Step 1|Grip the Bar
バーを**順手(手のひらを前方へ向ける)**で握ります。
まずは肩幅〜肩幅よりやや広い程度から開始します。
極端に広いグリップにする必要はありません。
Grip widthや手の向きを変えると筋活動や肩関節への負荷が変化するため、目的に応じて変更します。³
Step 2|Start From a Controlled Hang
肘を伸ばし、身体をバーの下に安定させます。
体幹を軽くコントロールし、
- 過剰に腰を反らす
- 脚を振る
- 左右へ身体をねじる
といった代償をできるだけ抑えます。
肩甲骨を無理に「下へ固定」する必要はありません。
重要なのは、
オーバーヘッドポジションで肩甲骨・上腕骨・体幹をコントロールできること
です。
Step 3|Initiate the Pull
バーを身体の方へ引くというより、
肘を身体の下方向へ引きながら、自分の身体をバーへ近づける
イメージで上昇します。
動作初期から、
- 肩関節周囲筋
- 肩甲骨スタビライザー
- 肘屈曲筋
が協調します。
Musculoskeletal modelingでは、Pull-Upの各フェーズで働く筋が変化し、僧帽筋や棘下筋、上腕筋は比較的初期、広背筋や上腕二頭筋は中盤で大きな役割を担うことが報告されています。³
Step 4|Pull Until the Chin Clears the Bar
身体を引き上げ、
顎がバーを越える位置
まで上昇します。¹
ただし、顎を無理に突き出して「クリア」するのではなく、身体全体をコントロールしたまま上昇します。
胸を必要以上に反らしたり、脚を振って勢いを作ったりしないことがStrict Pull-Upでは重要です。
Step 5|Lower Under Control
上部からゆっくり下降します。
肘を徐々に伸ばしながら、肩甲帯と体幹のコントロールを維持します。
下降局面も単なる「脱力」ではなく、筋群がEccentricに身体重量をコントロールする重要なフェーズです。
Step 6|Reset and Repeat
肘が伸びた開始位置へ戻り、身体の揺れをコントロールします。
次の反復を行う前に、
姿勢・左右差・反動
をリセットします。
疲労によって脚や体幹の振りが大きくなることがBiomechanical研究でも確認されているため、反復回数よりもフォームの質を優先することが重要です。¹
Pull-Up はどの筋を使うのか?
広背筋|Latissimus Dorsi
広背筋はPull-Upの主要な動力源の1つです。
上腕骨を体幹方向へ動かしながら、身体をバー方向へ引き上げます。
特にWide-Grip variationでは、広背筋を含むBack Musculatureへの相対的負荷が大きくなることが報告されています。³
上腕二頭筋・上腕筋|Biceps Brachii & Brachialis
肘を曲げながら身体を引き上げるため、上腕二頭筋と上腕筋も重要です。
標準的な前方Grip Pull-Upでは、Wide GripやReverse Gripと比較してBiceps Brachii・Brachialisへの相対的負荷が高かったというBiomechanical modeling研究があります。³
つまりPull-Upは、
背中だけではなく、強い肘屈曲能力も必要なエクササイズ
です。
前腕・握力|Forearm & Grip
身体全体をバーから保持するため、前腕筋群と握力も重要なLimiting Factorになります。
2025年の8週間トレーニング研究では、Pull-Up trainingにForearm-specific trainingを追加した群が、Core Trainingを追加した群よりもPull-Up反復回数、Grip Strength、Dead-Hang Timeで大きな改善を示しました。²
つまり、
Pull-Upができない=背中が弱い
とは限りません。
握力がLimiting Factorになっている場合もあります。
肩甲骨スタビライザー|Scapular Stabilizers
僧帽筋、菱形筋、前鋸筋などは、肩甲骨を胸郭上でコントロールします。
Pull-Upでは手が固定され、身体が動くため、肩甲帯には大きな力を受けながら安定性を維持する能力が求められます。³
ローテーターカフ|Rotator Cuff
棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋は、Pull-Up中に上腕骨頭をコントロールします。
特にReverse/Supinated Gripでは、他のVariationよりローテーターカフへの相対的負荷が高いことがBiomechanical modelingで報告されています。³
体幹|Core
Pull-Up中には腹筋群などが働き、身体が過剰に伸展・回旋・Swingしないようにコントロールします。²˒¹⁰
そのためPull-Upは、
Upper-Body Pulling Exercise + Suspended Trunk-Control Task
として考えることができます。
Clinical Relevance|臨床的に何が重要?
Pull-Upは肩関節を大きなOverhead Rangeで動かしながら、自分の体重という大きな外部負荷を受けるエクササイズです。³
そのため肩リハビリでは非常に有用な一方、
初期リハビリ用エクササイズではありません。
Overhead athleteのリハビリに関するSystematic ReviewではClosed-Chain Upper-Extremity Exerciseを支持するエビデンスがありますが、より高度で競技特異的なExercise prescriptionについては依然としてエビデンスが限定的です。⁶
そのためPull-Upは一般的に、
十分な肩関節可動域・筋力・肩甲帯コントロール・荷重耐性を獲得した後のLate-Stage Exercise
として考えるのが合理的です。
Gripによって負荷は変わる
Pull-Upは握り方を変えるだけでも同じエクササイズではなくなります。
Biomechanical研究では、
Wide Pronated Grip
→ 広背筋、僧帽筋、菱形筋などBack Musclesへの相対的負荷↑
Front Pronated Grip
→ Biceps Brachii・Brachialisへの相対的負荷↑
Reverse / Supinated Grip
→ Rotator Cuffへの相対的負荷↑
という違いが報告されています。³
したがって、
「どのGripが一番良いか?」
ではなく、
「何をトレーニングしたいか、どの組織への負荷を調整したいか?」
で選択することが重要です。
Gripによって負荷は変わる
Pull-Upを1回もできない選手に、失敗を繰り返させる必要はありません。
Progressionとして、
Lat Pulldown
↓
Assisted Pull-Up
↓
Eccentric Pull-Up
↓
Isometric Hold
↓
Strict Pull-Up
↓
Weighted / Explosive Pull-Up
と段階的に進めることができます。
Alternative Pulling ExerciseでもLatissimus Dorsi、Biceps、Trapeziusなどを十分にトレーニングできるため、最終的なPull-Upに向けて負荷を段階的に高めることができます。⁹⁻¹¹
Strict Pull-Up vs Kipping Pull-Up
Kipping Pull-Upでは下肢や体幹のMomentumを利用して身体を引き上げます。
その結果、Strict Pull-UpとはMuscle RecruitmentやKinematicsが異なります。⁸
Kippingは多くの反復をWhole-Bodyで行う競技的スキルとして有用ですが、
上半身のPulling Strengthを評価・強化する目的ではStrict Pull-Upと同じものとして扱うべきではありません。
Why It Matters for Athletes|
アスリートにとっての重要性
Relative Upper-Body Strength
Pull-Upの特徴は、
自分の体重そのものがResistanceになること
です。
トレーニング経験者を対象とした研究では、Pull-Up回数はBody Mass、Lean Body Mass、Fat Massと負の関連を示し、Absolute Lat Pull 1RMとは有意な関連を示しませんでした。⁴
一方、体重と同等の負荷を使ったLat Pull performanceとは関連しました。⁴
つまりPull-Upでは、
Absolute StrengthよりもStrength-to-Body-Mass Ratio
が非常に重要です。
Climbing and Pulling Sports
クライミングのように、自分の身体を上肢で引き上げる競技ではPull-Up能力は非常に競技特異的です。
クライマーを対象とした5週間の研究では、Eccentric、Isometric、Plyometric Pull-Up trainingはいずれも最大Pull-Up strengthを改善し、PowerやVelocityの適応はトレーニング方法によって異なりました。⁵
つまり、
Strength、Power、EnduranceではPull-Upのトレーニング方法も変える必要があります。
Practical Progression
Lat Pulldown / Assisted Pull-Up
↓
Dead Hang + Scapular Control
↓
Eccentric Pull-Up
↓
Strict Pull-Up
↓
Higher-Repetition Pull-Up
↓
Weighted Pull-Up
↓
Explosive / Sport-Specific Pulling
トレーニングの目的が、
Strength・Endurance・Power
のどれなのかによって負荷、回数、速度を変えることが重要です。⁵
< Take-Home Message >
Pull-Upは、
自分の身体重量を使って上半身のPulling Strengthと肩甲帯・体幹コントロールを同時にトレーニングする高負荷エクササイズ
です。
主に、
広背筋、上腕二頭筋、上腕筋、前腕筋群
を大きく使いながら、肩甲骨スタビライザー、ローテーターカフ、体幹筋群も協調します。²˒³
アスリートにとって重要なのはPull-Up回数そのものだけではありません。
Relative Strength、Grip Strength、肩関節のLoad Tolerance、肩甲骨・体幹コントロール
を統合してトレーニングできることがこのエクササイズの大きな価値です。
ただし、すべての人が同じGripやVariationを使う必要はありません。
最終的には、
競技・トレーニング目的・身体能力・症状に合わせてPull-UpをProgressさせること
が重要です。
< Reference >
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