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Evidence-Based Article

X線・MRIは何を教えてくれるのか?

画像を「答え」にせず、臨床で正しく使うために

Key Points|まず知っておきたいこと

  • X線、MRI、CTは、身体の構造を評価する非常に重要な医療ツールです。
  • しかし、画像上の異常と痛みには必ずしも1対1の関係があるわけではありません。
  • 椎間板変性、半月板損傷、軟骨変化などは、痛みのない人にも認められることがあります。
  • 画像は「何が存在するか」を教えてくれますが、その人がなぜ痛いのか、何ができないのかを画像だけで完全に説明することはできません。
  • 最も重要なのは、画像所見を病歴・症状・身体評価・機能・経過と統合して解釈することです。

画像は非常に重要。でも「すべての答え」ではない

病院でX線やMRIを撮り、

「関節がすり減っています」

「椎間板が変性しています」

「半月板に損傷があります」

「bone on boneですね」

と説明されると、

「これが痛みの原因なんだ」

と感じるのは自然なことです。

実際、画像診断は現代医療に欠かせません。

骨折、脱臼、腫瘍、感染、重度の靭帯・腱損傷、骨軟骨病変など、画像によって初めて明確になる重要な病態もあります。

一方で、CTやMRIが時に「Donut of Truth(真実のドーナツ)」と表現されるように、画像を撮ればすべての答えが得られるという期待が生まれやすいことも指摘されています。¹

しかし、

画像は重要な情報源であって、臨床判断そのものではありません。

X線・CT・MRIはそれぞれ何を見るのか?

画像検査によって得意な情報は異なります。

X線

主に、

  • 骨折
  • 関節アライメント
  • 関節裂隙
  • 骨棘
  • 変形
  • 一部の関節変性

などの評価に使用されます。

CT

X線より詳細な骨構造を確認でき、

  • 複雑な骨折
  • 骨形態
  • 関節面
  • 骨性アライメント

などの評価に有用です。

MRI

軟部組織を含め、

  • 靭帯
  • 腱
  • 筋
  • 半月板・関節唇
  • 軟骨
  • 骨髄
  • 椎間板
  • 神経周囲組織

などを詳細に評価できます。

つまり画像は、身体の構造に関する非常に価値のある情報を提供します。

一方で、通常の静的な画像だけから、

  • どれだけ力を出せるか
  • バランスが取れるか
  • ジャンプできるか
  • 走れるか
  • どの負荷で痛みが出るか
  • スポーツに戻れるか

を直接判断することはできません。

研究エビデンス、臨床家の専門性、患者の価値観を統合して意思決定するEBPの三要素

「画像上の異常=痛み」とは限らない

画像を理解するうえで最も重要なポイントの一つです。

画像で異常が見つかっても、その人に必ず症状があるとは限りません。

例えば、3,110名の無症状者を含むシステマティックレビューでは、腰椎の椎間板変性は20歳でも約37%に認められ、年齢とともに増加し、80歳では約96%に達していました。²

椎間板膨隆も、無症状者の20歳で約30%、80歳では約84%に認められました。²

膝でも同様です。

無症状かつ膝外傷歴のない成人4,751名を対象としたシステマティックレビューでは、MRI上、

  • 軟骨欠損:約24%
  • 半月板損傷:約10%
  • 骨髄病変:約18%
  • 骨棘:約25%

が確認されました。³

これらの所見は特に年齢とともに増加します。

つまり、

画像上の変化の一部は、症状がなくても存在します。

研究エビデンスを関連性や適用可能性から評価し、個々の患者に適用する流れを示す図

では、画像所見は意味がないのか?

もちろん違います。

ここで逆方向に考えすぎることにも注意が必要です。

例えば、骨折や重度の関節変形、明らかな組織損傷など、画像所見が症状や治療方針に大きく影響するケースは数多くあります。

膝OAでも、画像上の重症度と症状には関連がみられます。

しかし、その関連は完全ではありません。

過去のシステマティックレビューでは、膝痛のある人のうちX線上のOAが認められる割合も、X線上OAがある人のうち痛みを認める割合も、研究によって大きく異なっていました。⁴

したがって正しい理解は、

「画像は関係ない」でも、
「画像がすべてを説明する」でもありません。

画像と症状を一緒に解釈することが重要です。

研究集団の平均的な結果を、症状・競技・年齢・目標・環境が異なる個人へ適用する概念図

画像を追加すれば、常に判断が良くなるわけではない

より詳細な画像を撮れば、必ずより良い臨床判断につながるとも限りません。

胸腰椎外傷30症例を41名の脊椎外科医が評価した研究では、X線だけでは骨折分類の正答率は43.4%でした。

CTを加えることで分類精度は大きく改善しましたが、さらにMRIを追加した際の改善は小さく、手術が必要かどうかの判断もMRI追加後には有意に変化しませんでした。⁵

これはMRIが不要という意味ではありません。

むしろ、

必要な画像検査は、「何を知りたいのか」という臨床質問によって変わる

ことを示しています。

臨床家の専門性とアンカリング、確証バイアス、利用可能性バイアス、過信などの認知バイアスを示す図

「とりあえず画像を撮る」が良いとは限らない

画像は必要なときには非常に有用ですが、必要性が低い状況でルーティンに撮影しても、必ずしも患者の結果が良くなるわけではありません。

低腰痛患者を対象としたランダム化比較試験のメタアナリシスでは、重篤な疾患を疑う所見がない患者に対するルーティンの早期画像検査は、通常診療と比較して痛みや機能を改善しませんでした。⁶

重要なのは、

画像を撮ること自体が良い・悪いのではなく、画像を撮る明確な目的があるかどうかです。

画像の「言葉」が患者に与える影響

画像所見をどのように説明するかも重要です。

「Degeneration」

「Arthritis」

「Disc bulge」

「Bone on bone」

といった表現は、患者にとって非常に強い言葉になることがあります。

腰痛に関するランダム化されたシナリオ研究では、「Disc bulge」「Degeneration」「Arthritis」などの診断ラベルを提示された人は、より中立的なラベルを提示された人に比べて、画像検査や手術、セカンドオピニオンの必要性を高く評価し、回復への期待も低くなる傾向がみられました。⁷

これは、画像所見を隠すべきという意味ではありません。

正確に伝えながら、不必要な恐怖を生まない説明が重要

ということです。

エビデンス、患者評価、目標と価値観、治療選択、反応の確認、調整を繰り返すEvidence-Based Practiceの臨床判断サイクル

リハビリで画像と一緒に見るべきもの

リハビリテーションでは、構造だけではなく機能も評価します。

例えば、

  • どの動作で症状が出るのか
  • 可動域はどうか
  • 筋力・パワーはどうか
  • バランスや運動制御はどうか
  • どの程度の負荷に耐えられるか
  • スポーツや仕事で何ができないのか
  • 症状は時間経過でどう変化しているか
  • 治療や運動にどう反応するか

などです。

専門的な理学療法士を対象にした質的研究でも、画像所見は単独ではなく、患者の症状、機能的な影響、治療上の注意点、紹介の必要性などと統合して解釈されていました。⁸

画像が、

「身体に何があるのか」

を教えてくれるとすれば、

機能評価は、

「それがこの人にとって何を意味しているのか」

を理解する助けになります。

What We Know|現在わかっていること

  • 画像診断は、構造的病変の発見や診断・治療計画に非常に重要である。
  • 画像上の変性や損傷所見は、無症状者にも頻繁に認められる。²˒³
  • 画像所見の重症度と症状には関連する場合があるが、完全には一致しない。⁴
  • より多くの画像を撮ることが、必ずしもより良い患者アウトカムにつながるわけではない。⁶
  • 画像所見は、病歴・身体所見・機能と統合して解釈する必要がある。⁸

What We Don’t Know|まだ単純に答えられないこと

  • 画像で見つかった複数の所見のうち、どれが個人の痛みにどの程度関与しているのか
  • 無症状の画像所見が、将来必ず症状につながるのか
  • 個々の患者の痛みや競技能力を画像だけから正確に予測する方法
  • どの程度の構造変化まで「正常な加齢・適応」で、どこから臨床的に重要なのかをすべての人に共通して決める基準

アスリート・保護者・コーチ・トレーナーへのメッセージ

画像で「異常」が見つかっても、

「身体が壊れている」
「もうスポーツはできない」
「この画像がすべての痛みの原因だ」

とすぐに考える必要はありません。

一方で、

「画像なんて意味がない」

と無視することも適切ではありません。

重要なのは、

画像上の所見が、現在の症状や機能とどのように関係しているのか

を理解することです。

< Take-Home Message >

 

X線、CT、MRIは、現代医療に欠かせない強力なツールです。

しかし、画像は「答え」そのものではなく、臨床判断に必要な情報の一つです。

画像上の異常があるから必ず痛いわけでもなく、画像に大きな異常がないから症状が存在しないわけでもありません。

大切なのは、

画像 + 病歴 + 症状 + 身体評価 + 機能 + 経過

を統合して考えること。

画像を信じるか、信じないかではなく、正しく理解して使うこと。

それがEvidence-Based Practiceにおける画像診断の役割です。

PA Images

<PDF File>

< Reference >

  1. Aguilar C, Gunderman R. The donut of truth. J Am Coll Radiol. 2022;19(8):992-993. doi:10.1016/j.jacr.2022.04.004.
  2. Brinjikji W, Luetmer PH, Comstock B, et al. Systematic literature review of imaging features of spinal degeneration in asymptomatic populations. AJNR Am J Neuroradiol. 2015;36(4):811-816. doi:10.3174/ajnr.A4173.
  3. Culvenor AG, Øiestad BE, Hart HF, Stefanik JJ, Guermazi A, Crossley KM. Prevalence of knee osteoarthritis features on magnetic resonance imaging in asymptomatic uninjured adults: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2019;53(20):1268-1278. doi:10.1136/bjsports-2018-099257.
  4. Bedson J, Croft PR. The discordance between clinical and radiographic knee osteoarthritis: a systematic search and summary of the literature. BMC Musculoskelet Disord. 2008;9:116. doi:10.1186/1471-2474-9-116.
  5. Rajasekaran S, Vaccaro AR, Kanna RM, et al. The value of CT and MRI in the classification and surgical decision-making among spine surgeons in thoracolumbar spinal injuries. Eur Spine J. 2017;26(5):1463-1469. doi:10.1007/s00586-016-4623-0.
  6. Chou R, Fu R, Carrino JA, Deyo RA. Imaging strategies for low-back pain: systematic review and meta-analysis. Lancet. 2009;373(9662):463-472. doi:10.1016/S0140-6736(09)60172-0.
  7. Hall AM, Ferreira PH, Maher CG, et al. Effect of diagnostic labelling on management intentions for non-specific low back pain: a randomized scenario-based experiment. Eur J Pain. 2022;26(9):1913-1924.
  8. Agustsson H. Diagnostic Musculoskeletal Imaging: How Physical Therapists Utilize Imaging in Clinical Decision-Making. Doctoral dissertation. Nova Southeastern University; 2018.