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リカバリーのためのコンプレッションセラピー:本当に効果はあるのか?

トップアスリートの多くがトレーニング後にコンプレッションデバイスを愛用していることをご存じですか? Normatec や GameReady といった機器は、今やロッカールームやジムで当たり前の光景になっています。これらのデバイスは脚や腕に圧をかけることで、練習や試合後の回復を早めることを目的としています。ランニングやウェイトトレーニング、ハードな練習の後に使用されることが多いですが、果たしてコンプレッションセラピーは本当に効果があるのでしょうか?

コンプレッションセラピーは効果がある?

研究によると、コンプレッションセラピーは回復の手段として一定の効果が期待できますが、その効果の大きさは状況や方法によって異なります。例えば、回復期に使用することで筋肉痛の軽減やパフォーマンス回復をサポートすることが示されていますが、圧力の強さと効果には明確な関連性は見られません。

エリートアスリートを対象にした研究では、動的コンプレッションが痛みの閾値を上げ、その効果が一日中持続することが確認されています。さらに最近の研究では、間欠的空気圧迫が筋機能の小さな改善や痛み・筋肉痛の中程度の軽減に有効であるとされ、特に「20~30分」「約80mmHg」での使用が最適とされています。また、あるシステマティックレビューでは効果は控えめながらも、安全で回復戦略の一部として有効であると結論づけられています。

コンプレッション
リカバリー

どのように作用するのか?

コンプレッションセラピーの仕組みは血流改善にあります。加圧により静脈還流を促進し、深部静脈の血流速度を上げ、下肢の血液の滞留を減らすと考えられています。これにより、代謝老廃物の除去を早め、酸素や栄養素を筋肉に供給しやすくなる可能性があります。

また、筋機能の回復促進や筋損傷マーカーの減少、運動後の筋グリコーゲンの保護効果も報告されています。ただし、直後のパフォーマンス向上に関しては結果が一貫しておらず、より強いエビデンスは「回復」への効果にあります。実際、コンプレッションを使用したアスリートは「筋肉のダメージが少なく感じる」「次のセッションでより良く動ける」などと報告しています。

結論

では、アスリートはコンプレッションセラピーを取り入れるべきでしょうか? 研究結果からは「魔法のような即効性はないものの、筋肉痛の軽減や快適性の向上、トレーニング間の回復サポートに役立つ」と言えます。特に20〜30分、適度な圧での使用が効果的とされています。

ただし、睡眠・栄養・トレーニング負荷の管理といった基本的な回復戦略と組み合わせて使うことが重要です。コンプレッションセラピー単独で劇的な効果を期待するのではなく、総合的なリカバリープランの一部として活用することをおすすめします。

結論として、コンプレッションセラピーは「すぐにパフォーマンスを上げる魔法のような手段」ではありませんが、長期的に見れば、アスリートがより賢くトレーニングし、効率的に回復し、継続的に成果を出すための有効なツールとなるでしょう。

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